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東京地方裁判所 昭和58年(行ウ)85号 判決 1992年4月21日

東京都墨田区立花三丁目一九番四号

原告

若林義文

右訴訟代理人弁護士

弓仲忠昭

桒原周成

東京都墨田区東向島二丁目七番一四号

被告

向島税務署長 田中幸雄

右指定代理人

齋藤隆

仲田光雄

綱脇豊紀

高橋俊和

斉藤和

主文

被告が昭和五六年三月一二日付で原告の昭和五四年分所得税についてした更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、課税総所得金額を五五八万四〇〇〇円として計算した額を超える部分を取り消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告がいずれも昭和五六年三月一二日付でした

(一) 原告の昭和五二年分所得税の更正のうち総所得金額が一八〇万円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

(二) 原告の昭和五三年分所得税の更正のうち総所得金額が一一八万円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

(三) 原告の昭和五四年分所得税の更正のうち総所得金額が一二三万円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告の昭和五二年分、昭和五三年分及び昭和五四年分の各所得税につき、原告がした確定申告、被告がした更正及び過少申告加算税賦課決定並びに原告がした不服申立て及びこれに対する応答の経緯は別表第一の一ないし三のとおりである。(以下、右各年を「係争各年」と、右各申告を順次、「五二年分申告」、「五三年分申告」、「五四年分申告」と、右各更正を順次、「五二年分更正」、「五三年分更正」、「五四年分更正」と、右各賦課決定を順次、「五二年分賦課決定」、「五三年分賦課決定」、「五四年分賦課決定」といい、また、五二年分更正、五三年分更正及び五四年分更正を併せて「本件各更正」と、五二年分賦課決定、五三年分賦課決定及び五四年分賦課決定を併せて「本件各賦課決定」と、本件各更正と本件各賦課決定とを併せて「本件各処分」という。)

2  原告は、五二年分更正のうち総所得金額が一〇八万円を超える部分、五三年分更正のうち総所得金額が一一八万円を超える部分及び五四年分更正のうち総所得金額が一二三万円を超える部分並びに本件各賦課決定に不服があるから、その取消しを求める。

二  請求の原因に対する認否

請求の原因1は認める。

三  抗弁

1  原告は、係争各年当時、東京都墨田区立花三丁目一九番四号の作業所兼居宅(以下「原告宅」という。)及び埼玉県三郷市栄二丁目一二五番一号の作業所兼居宅(以下「三郷工場」という。)において、旋盤、フライス盤等の金属工作機械を使用し、専ら受注先から材料の供給を受けて機械部品等の受託加工業を営んでいたものである。

2  本件調査の経緯等

(一) 被告は、五二年分申告、五三年分申告及び五四年分申告に係る原告の申告書に、事業所得の計算に必要な収入金額及び必要経費の額が記載されていないこと、原告にはかなりの多額の収入金額が想定されるにもかかわらず、同業者と比較して所得金額が過少であることなどから、被告所部係官渡辺浩治(以下「渡辺係官」という。)にその調査を命じた(以下、渡辺係官による原告に対する調査を「本件調査」という。)。

(二) 渡辺係官は、昭和五五年六月六日、本件調査のため原告宅に赴いたが、原告が不在であったので原告の妻若林えつ(以下「えつ」という。)に所得税調査に赴いた旨を告げ、原告に会いたいので原告から都合のよい日を連絡してくれるように伝言をして辞去した。

その後、四か月を経過しても原告からは何の連絡もなかったので、渡辺係官は、同年一〇月二七日及び同年一一月四日に原告宅に赴いたが、いずれも原告は不在であった。

(三) 同月七日、渡辺係官は、原告宅に電話して居合せた原告に対し、同日午後一時に臨場する旨伝えて、右時刻に原告宅を訪れ、二階居間に通されたところ、原告及びえつのほか、墨田民主商工会(以下、民主商工会を「民商」と、墨田民主商工会を「墨田民商」という。)の会員三名が待機していた。渡辺係官は、原告に対し、昭和五二年分から昭和五四年分の所得税の調査に来た旨を告げた上で、民商会員三名を退席させるよう要請したが、原告はこれに応じないで、身分証明書の提示を要求した。渡辺係官が身分証明書を提示すれば調査に応ずるかと尋ねたところ、原告は、調査を受けるとも受けないとも未定であると述べ、更に、右民商会員らとともに、「日本は法治国家だがら公務員が理由もよく言わないでやたら調査にくるのは国民の平和な生活を乱し、法律違反だ」などと、口々に言い立てた。そして、渡辺係官が原告に対し帳簿書類の提示を求めると、原告は、「調査執行に当たっていかなる理由があるのか、目的は何かを文書にして貫いたい、署長印を押したものでなくてもよい、統括官あるいは係官の書いたものでもよい、その文書を見て納得のいく理由であるなら調査を受ける態勢を取ることにしよう」と言い出した。渡辺係官は、一応原告の言い分を上司に報告する旨伝えると、原告は、「文書が到達してから調査に応ずることにするから、今日はこの位にしておこう」と一方的に話しを打ち切ろうとしたので、渡辺係官はこのような状態では調査の進展は望めないと判断して、原告宅を辞去した。

(四) その後、渡辺係官は、原告と電話で連絡を取った上で、同月一八日午後一時に原告宅を訪れ、二階居間に通されたところ、原告及びえつのほか、右(三)の民商会員三名が待機しており、渡辺係官が退席要請をしたにもかかわらず、右三名は退席しなかった。渡辺係官が原告に身分証明書を提示すると、原告それを手に取って税務署名、官職、氏名をメモしたが、「俺が身分証明書を見たからといって調査を受けるという意味じゃないよ」と述べ、更に渡辺係官に対し「この間の文書を持ってきたか」と尋ねたので、渡辺係官は、原告に対し、そのような文書を提示する必要はない旨回答するとともに、口頭で、長期間調査を行っていないこと、同業者と比較して所得金額が少ないことが調査理由である旨を告げた。

すると、原告は、「口頭の理由ではだめだ、今あんたの言ったことを書いてくれ」とか、「その必要がないというならそのことを文書を作って署長印を押してくれ、俺はそれを持って国税局や国税庁へ行くから、あんたも同行してくれ」などと述べ、更に、渡辺係官が機械や従業員について質問をしても、「機械らしいものはないよ」とか「従業員は高齢者と家庭の主婦ばかりだよ、調査を承諾したつもりではないから、これ以上のことは何も言えないよ」などと述べるだけであった。

そこで、渡辺係官が、事実の内容について説明せず、帳簿書類も提示しないのであれば、独自の調査を行わざるを得ない旨を述べると、原告は、「そんなことができるはずがない、この前の調査のとき、反面調査に来ている税務署員に取引先で会ったので怒鳴りつけてやったら逃げて帰ったよ」とか、「調査理由書は交付しないという文書を署長から貰って持って来てくれ、俺はそれを持って局長のところにいって判を押して貰い、連判状にして国税庁長官のところへ行く」とか、「民主主義の世の中で主権在民と言ってあんたたちは公僕なのだ、納税者が一段上にあるのだから、お宅の申告のどこどこがおかしいと思うから調査させてくださいと要請するものなのだ」などとまくしたてた。

3  本件各更正の適法性

(一) 推計の必要性

右2のとおり、原告は、被告所部職員の調査の際、帳簿書類を一切提示せず、また、被告所部職員の質問にもまともに答えようとしないで、原告の事業の実態を明らかにしなかった。そのため、被告は、係争各年の原告の所得金額を実額で算定することができなかったので、やむを得ず、原告の取引先に対する調査等によって把握した原告の収入金額を基礎として推計により係争各年の原告の所得金額を算出し、これに基づいて本件各更正をしたものであるから、右推計には、その必要性が存在する。

(二) 原告の総所得金額

被告が本訴において主張する原告の係争各年分の総所得金額(いずれも事業所得の金額)及びその算出過程は別表第二のとおりであり、右算出過程に係る各項目の内容は次のとおりである。

(1) 収入金額

被告が原告の各取引先を調査して把握した原告の係争各年分の収入金額であり、その内訳は別表第三のとおりである。

(2) 一般経費

右(1)の係争各年分の収入金額に、原告の近隣区域内に事業所を有して原告と同業の機械部品受託加工業を営む個人事業者で、原告と規模の類似するもの(別表第四の一ないし三の各「記号」欄に記載の者であり、その具体的な抽出基準は後記(三)の(2)のとおりである。以下「比準同業者」という。)の係争各年分の収入金額に対する一般経費の割合(以下「一般経費率」という。)の平均値(別表第四の一ないし三のとおり、昭和五二年分が二二・四四パーセント、昭和五三年分が二一・一八パーセント、昭和五四年分が一九・三五パーセント)をそれぞれ乗じて得た金額である。

(3) 特別経費

次のアないしウの各金額の合計額である。

ア 人件費及び外注加工費

右(1)の係争各年分の収入金額に、比準同業者の係争各年分の収入金額に対する人件費の割合(以下「人件費率」という。)の平均値(別表第四の一ないし三のとおり、昭和五二年分が五九・七七パーセント、昭和五三年分が六〇・七九パーセント、昭和五四年分が六三・三七パーセント)をそれぞれ乗じて得た金額である。

イ 借入金利子・割引料

原告の係争各年分の事業所得に得る借入金利子・割引料の金額であり、その内訳は別表第五のとおりである。

ウ 地代

原告宅の敷地の地代である。

(三) 推計の合理性

(1) 被告が原告の係争各年分の事業所得に係る一般経費及び人件費を算出するに当たり採用した推計の方法は、右(二)のとおり、原告の収入金額を基礎数値とし、比準同業者の一般経費率及び人件費率の各平均値を用いてそれぞれの金額を算出したものであり、かかる推計の方法が合理的であることはいうまでもない。

(2) そして、右の比準同業者は、原告宅の近隣区域内である向島税務署管内及び同署に隣接する各税務署管内に事業所を有し、機械部品受託加工業を営む個人事業者であって、かつ、次の<1>ないし<6>のいずれの条件にも該当する者を全員抽出したものである。

<1> 旋盤、ボール盤、フライス盤等の金属工作機械を使用し、更にその材料を専ら受注先から支給されている者

<2> 係争各年分について青色申告書提出の承認を受けている者

<3> 係争各年分の収入金額がそれぞれ原告のそれの半分以上二倍以下の範囲内である者

<4> 年を通じて右機械部品受託加工業を営んでいる者

<5> 災害等により経営状態が異常であると認められる者以外の者

<6> 税務署長から更正又は決定処分がされている者にあっては、国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間及び出訴期間の経過している者並びに当該処分に対する不服申立調査及び訴訟が終結した者

(3) 右(2)により抽出された比準同業者の数は係争各年ともいずれも四件で(なお、後記原告の主張に鑑み、これら比準同業者の従業員数等及び使用する主要機械設備を明らかにすると別表第六のとおりである。)、これら比準同業者の一般経費率及び人件費率は別表第四の一ないし三のとおりであったところ、右比準同業者は右(2)の条件のいずれにも該当する者を機械的に抽出しているので、被告の恣意が介在する余地はなく、その抽出は公正である。

(四) 本件各更正に係る原告の事業所得の金額は、いずれも当該年に係る右(二)の事業所得の金額の範囲内であるから、本件各更正は適法である。

4  本件各賦課決定の適法性

(一) 五二年分更正により原告が更に納付すべき税額は六二万三〇〇〇円(国税通則法(昭和五九年法律第五号による改正前のもの、以下同じ。)一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)であるから、同法六五条一項により右税額に一〇〇分の五を乗じて算出した三万一一〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満の端数切捨て)の過少申告加算税を賦課した五二年分賦課決定は適法である。

(二) 五三年分更正により原告が更に納付すべき税額は七九万五〇〇〇円(国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)であるから、同法六五条一項により右税額に一〇〇分の五を乗じて算出した三万七九〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満の端数切捨て)の過少申告加算税を賦課した五三年分賦課決定は適法である。

(三) 五四年分更正により原告が更に納付すべき税額は一〇三万二〇〇〇円(国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)であるから、同法六五条一項により右税額に一〇〇分の五を乗じて算出した五万一六〇〇円の過少申告加算税を賦課した五四年分賦課決定は適法である。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1は認める。

2(一)  同2の(一)は不知。

(二)  同(二)のうち、渡辺係官が昭和五五年六月六日原告宅に赴いたが、原告が不在であったこと、渡辺係官がえつに対し原告に会いたいので原告から都合のよい日を連絡してくれるように伝言をしたこと、その後四か月を経過しても原告が渡辺係官に連絡をしなかったこと、渡辺係官が同年一〇月二七日及び同年一一月四日に原告宅に赴いたが、いずれも原告は不在であったことは認め、その余は否認する。

(三)  同(三)のうち、渡辺係官が同月七日原告宅に電話して居合せた原告に対し同日午後一時に臨場する旨伝え、右時刻に原告宅を訪れて二階居間に通されたこと、右居間には原告及びえつのほか、民商の会員三名が待機していたことは認め、その余は否認する。

(四)  同(四)のうち、渡辺係官が原告と電話で連絡を取った上で同月一八日午後一時に原告宅を訪れ、二階居間に通されたこと、右居間には原告及びえつのほか、右(三)の民商会員三名が待機していたこと、原告が渡辺係官に対し「この間の文書を持ってきたか」と尋ねたところ、渡辺係官がそのような文書を提示する必要はない旨回答したことは認め、その余は否認する。

3(一)  同3の(一)のうち、被告が推計により係争各年の原告の所得金額を算出しこれに基づいて本件各更正をしたことは認め、その余は否認する。

(二)(1)  同(二)の(1)及び(2)は否認する。

(2)ア 同(3)のアは否認する。

イ 同イのうち、原告が係争各年分の事業所得に係る借入金利子・割引料の金額として、別表第五の金額を同表記載の金融機関に支払ったことは認める。ただし、係争各年分の原告の事業所得に係る借入金利子・割引料の金額は右に止まらない。

ウ 同ウは否認する。

(三)  同(三)及び(四)は争う。

4  同4は争う。

五  原告の主張

1  推計の必要性の不存在

(一) 本件調査の経緯等

(1) 渡辺係官は、本件調査に先立ち、過去に原告に対する所得税調査に担当したことのある他の税務職員から、原告に怒鳴られたことがあると聞き、そのことからこれを調査妨害とした上、かかる調査妨害をした原告を民商の会員であると判断して本件調査に臨んだ。

(2) 渡辺係官は、昭和五五年六月六日、原告の不在中に原告宅を訪れ、居合せたえつに対し、何ら来意を告げることなく、同係官の姓及び電話番号を書いたメモを渡したのみで、立ち去った。

その後、渡辺係官は、同年一〇月二七日及び同年一一月四日、いずれも原告不在中に原告宅を訪れ、居合せた原告の長男憲(以下「憲」という。)やえつに来意を告げないで立ち去った。また、同年一〇月二七日には立ち去る際に同日中に再訪する旨告げたので原告は待機していたが、その日は姿を見せなかった。

(3) 同年一一月七日、渡辺係官から原告宅に同日訪れる旨の電話があり、その際来意は告げられなかったが、原告は所得税調査のためであることを予想し、過去の調査の際に税務職員との間で調査の経緯に関し言い争いがあったので、そのような言い争いを避けるために、原告も加盟している墨田民商の会員三名に立合いを依頼して原告宅に待機して貰っていた。

やがて渡辺係官が訪れたが、原告が同係官に対し、調査年度を文書で明らかにすること及び調査の進行経過についての調査の都度双方が確認した文書を残しておくことを要請すると、渡辺係官は、署に戻って原告の意向に沿うよう上司の本田統括国税調査官と相談する旨回答した。続いて、原告が渡辺係官に対し身分証明書の提示を求めると、渡辺係官は、未だ調査段階に立ち至っていないとして、提示しなかった。

(4) その後、同月一八日に渡辺係官が原告宅を訪れた際、原告が同係官に調査年度を明らかにした文書を携えてきたかどうか聞いたところ、渡辺係官は、そのような文書を提示する必要はない旨答え、このことについて上司と相談した形跡は全く窺えなかった。そこで、原告と渡辺係官との間で右文書の提示の要否につき押問答が続き、当日は結論の出ないまま、渡辺係官は辞去した。

(5) 同日二一日に至り、株式会社昌立製作所(以下「昌立製作所」という。)から原告に、向島税務署から係争各年の原告に対する支払の明細書の提出を求められている旨の連絡があり、原告は初めて調査年度が係争各年であることを知った。

原告は、直ちに向島税務署の本田統括国税調査官に電話して、調査年度を文書で明らかにするよう渡辺係官を通じて申し入れたことが税務署側に伝わっているか否かを質し、更に、渡辺係官が調査段階に至っていないと述べ、調査年度も原告に告げないまま、いきなり取引先の反面調査をすることは質問検査権の行使とならないから善処されたい旨申し入れたところ、本田統括国税調査官は、署長と相談して返事するから二、三日待って貰いたい旨答えたが、その後何の連絡もなかった。

(6) 同年一二月三日、原告の申入れを無視して渡辺係官が昌立製作所に反面調査に赴いたので、同月四日及び五日、原告が再三にわたり本田統括国税調査官に電話し、更に事前に連絡して、直接向島税務署に出向いて面会を求めたが、いずれも不在とのことで話をすることができず、更に、原告が同署長に面会を求めたところ、文書による申入れを要するとして断られたので、原告は文書により面会を申し入れたが現在に至るもその回答に接していない。

(7) 昭和五六年一月二七日渡辺係官が原告宅を訪れたので、原告は同係官に対し、口頭によっても文書によっても調査年度が明らかにされていないこと及び原告の文書による面会申入れに対し向島税務署長から何の回答もないことについて釈明書を提出すること並びにその上で改めて文書により調査年度の通告をすることを申し入れ、更に、右各文書が提出されれば原告は直ちにすべての調査資料を提出する旨申し述べた。

(8) その後、同年三月九日、原告の不在中に渡辺係官から電話で修正申告の申入れがあり、居合わせた憲が原告に直接連絡するよう応答したが、その後は渡辺係官からは何の連絡もなく、三月一三日に至って本件各処分の決定書が送達された。

(二) 右(一)のとおり、渡辺係官は、原告を調査妨害をした者であるとし、更に調査妨害をした故に原告を民商の会員であると判断して本件調査に臨んでいるのであり、このことから、渡辺係官が民商を好ましからざる団体とみなし、民商会員である原告の調査に際し、偏見に基づいて一般の調査とは異なる特別の対応をしたことが十分に窺われる。そして、そのような偏見の下に行われた本件調査において、渡辺係官ないし被告は、未だ原告に対する調査が継続中であるうちに反面調査を開始し、文書で調査年度を明らかにするよう求めた原告の要請に対し上司と相談して返事する旨答えながら、これを実行せず、原告に対し帳簿書類の提出を求めることもしなかった。更に本件調査においては、渡辺係官自らが未だ調査段階に立ち至っていないとして、身分証明書を提示せず、調査年度も明らかにしないまま経過していたのであり、このような調査が質問検査権の行使であるとは到底評価し得ない。

したがって、本件各更正をするに際し、推計の必要性があったものということはできない。

2  推計の合理性の不存在

(一)(1) 係争各年当時原告が使用していた機械はいずれも手動式のものであった上、大正一一年製造の研磨機を筆頭に、昭和一七年製造の旋盤、昭和一八年製造のフライス盤等、その大多数が平均耐用年数を超えた時代がかったものであり、最新式のコンピュータ制御によるNC旋盤がなかったことはもとより、通常の自動式機械も半自動式の機械すらもなかった。そして、その使用機械の古さに比例して機械の精度も極端に悪く、作業能率を妨げていたのみならず、このような機械を使用する関係上、人手だけは要し、しかも若年者は原告のような零細個人企業には集らないから、いきおい高齢者中心の従業員構成となって作業効率を悪くし、生産性を大きく阻害する要因となっていた。

また、原告の従業員についていえば、右のように年齢構成の上で問題があったのみならず、係争各年中の延べ一四名の従業員のうち三名を除いては熟練工の指図と段取りなくしては仕事を進めることのできないいわゆる素人工であって、その質の点でも劣っていた。にもかかわらず、原告は、その温情主義からこれら従業員を整理せずに抱え込んだままで、しかもその年齢にみあった生活給的観点を加味した高額の賃金の支払をしており、これが原告の経営を圧迫する大きな要因となっていた。

(2) 右のような使用機械の旧式性、従業員の年齢、質的構成及び高給化は、同業者中でも特異な存在であって、業者間に通常存在する程度の営業条件の差異とはいい得ないものであり、被告の主張する抽出基準に基づいて抽出された比準同業者との比較は原告の所得を推計するに当たり全く意味をなさないものである。

(二) 被告が主張する比準同業者の使用する主力機械に基づいて判断する限り、比準同業者Aは原告と同様普通旋盤を主力機械とする業者(通称旋盤屋)であるが、同Bはタレット旋盤とネジ切り機を主力機械とし、自己のみでボルトの生産をすることのできる業者(通称ボルト屋)、同Cはタレット旋盤を主力機械とする業者(通称タレット屋)、同Dはタッピングを主力機械とする業者(通称タッピング屋)である。

しかして、これら普通旋盤を主力機械とする業者もタレット旋盤を主力機械とする業者等も機械部品受託加工業者であるとはいえ、その特性の違いにより人件費の割合は全く異なるのが通常であり、所得の推計に当たって両者を同業者として包括することは到底できない。

(三) 右のとおり、被告は、原告の使用機械の旧式性及び原告の従業員に係る年齢、質的構成の問題点に由来する生産性の悪さ並びに原告の温情主義に基づく従業員扱いによる経営上の問題点を無視し、しかも、原告の同業者とはいい得ない者も加えて比準同業者とした上、原告の経費率及び人件費率を推計しており、かかる被告の推計は合理性を欠くものである。

3  実額主張

原告が作成していた売上帳、支払帳、従業員へ支払った給料賃金を記載した帳面(以下「賃金帳」という。)及び日新工業株式会社へ支払った外注費を記載した帳面(以下「日新工業帳」という。)並びに原告が保存していた請求書、領収書等の帳票類によれば、係争各年の原告の事業所得金額の実額及びその算出根拠は別表第七のとおりであり、また、特にその算出根拠のうちの人件費(従業員の給料賃金)の明細は別表第八の、外注加工費の明細は別表第九のとおりである。

そうすると、本件各更正において原告の事業所得とする金額は、いずれも当該年に係る別表第七の事業所得の金額を超えているから、本件各更正は違法である。

六  推計の合理性の不存在及び実額に関する原告の主張に対する被告の認否及び反論

1(一)  原告の主張2の(一)の(1)は不知。同(2)は争う。

(二)  同(二)の事実は否認し、主張は争う。

(三)  同(三)は争う。

(四)(1)  推計課税は、納税者の所得金額を直接資料によって把握することができない場合に、やむを得ず間接資料によって推計した数値を真実の所得金額に近似するものと認定して課税するものであり、右の推計によって得られる数値は一般的・抽象的見地から真実の所得金額に近似する蓋然性があれば足りるものであるから、推計の合理性の判断に当たっても、一般的・抽象的見地から見て、当該納税者の所得の実額に近似する数値を求めるにつき、必要な限度で類型的事実に基づき検討すれば足りると解される。しかるところ、比準同業者の経費率、所得率等の平均値を用いた推計を行う場合においては、納税者と同業者との間には個別的な営業条件等の差異が無限に存すると考えられるから、納税者と同業者との類似性を過度に要求するとすれば、推計による課税自体を否定することになりかねず、仮に、個別的な営業条件のすべてについて類似性を有する同業者を求めることができたとしても、その数はごく限られたものとなるであろうから、これを基礎とする推計は却って普遍性を欠くことになるといわざるを得ない。所得税法が推計課税を認めている以上、ある程度の抽象性は法の容認しているところであって、業種・業態、事業所所在地、事業規模等の基本的要因について、比準同業者を抽出する基準が合理的であれば、同業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は、その経費率、所得率等の平均値を求める過程で包摂され、その平均により捨象されているというべきである。

(2) 社会経済上、機械部品受託加工業とは、他者からの注文により金属材料を機械処理して機械部品の製造加工を行う業者、すなわち、請負により受注した機械部品を製造加工することにより生じた付加価値に基づいて収益を上げる者と観念されており、業態的には、旋盤、ボール盤、フライス盤等の金属工作機械及びその他の動力付金属加工機械を据え付け、これを用いて機械の部分品を製造加工するものと認識されている。

そこで、被告は、抗弁3の(三)の(2)のとおり、本件において比準同業者を抽出するに際し、同業者の類似性を確保するために、選定の対象者を、まず、業種・業態の類型的同一性という見地から、業種を「年を通じて機械部品受託加工業を営んでいる個人事業者」に限定した上、業態につき「旋盤、ボール盤、フライス盤等の金属工作機械を使用し、更にその材料を専ら受注先から支給されている者」という基準を設け、また、事業所所在地の地理的・環境的近接性を考慮して、原告宅の近隣区域内である向島税務署管内及び同署に隣接する各税務署管内に事業所を有する者に限定し、更に、推計の基礎資料の正確性の担保のために青色申告者に限り、事業規模の近似性を考慮して、「係争各年分の収入金額がそれぞれ原告のそれの半分以上二倍以下の範囲内である者」という基準(いわゆる倍半基準)を用い、特殊事情を排除するために、経営状態が異常であるとか、不服申立て・訴訟が係属中の者等を除くなどの配慮をした。

その結果、抽出された比準同業者については、一般経費率の最高値と最低値との差が三・五八パーセントないし四・五パーセント、人件費率の最高値と最低値との差が五・五七パーセントないし九・七七パーセントといずれも極めて狭い範囲内に分布しており、このことは、右の比準同業者の抽出過程が合理的であることを示している。

2(一)  原告の主張3は争う。

(二)(1)  被告は、本件において、原告の売上金額を基礎とし、同業者の一般経費率及び人件費率の各平均値を用いて原告の一般経費の額並びに人件費及び外注加工費の額をそれぞれ算定して、右売上金額から控除した後、実額計算可能な借入金利子・割引料の額及び地代の額を控除することにより原告の所得金額を推計計算している。

このような事案において、納税者が実額主張をする場合には、所得税法が、事業所得の金額については総収入金額から必要経費を控除した金額とし(同法二七条二項)、必要経費については総収入金額に係る売上原価その他当該収入金額を得るために直接要した費用等と定めている(同法三七条一項)ことに鑑みて、収入金額及び経費の一部を主張立証するだけでなく、その収入金額がすべての取引先からの総収入金額であることまで主張立証するか、又は、当該経費の主張が課税庁主張の収入金額に応ずる個別・限定的な経費の趣旨である場合には、課税庁主張の収入金額と納税者の主張する経費との個別・限定的な対応関係についてまで主張立証することを要するものというべきである。なぜなら、限定的に把握された収入金額から、経費についてのみ総額を差し引くことによって算出された金額が所得の実額に近似しない数値になることは明らかであるし(この点に関し、課税庁は調査によって把握できた限りの収入金額を推計の基礎としているのであって、その主張する収入金額は少なくともその程度の額の収入があったとの趣旨であり、それが納税者の収入金額のすべてであると主張しているわけではない。)、また、課税庁は、その主張する収入金額に対応する経費を推計又は推計を含む手法により算定しているのであり、右収入金額を前提とする経費の主張立証はこれに対応するものとしてされなければ不合理なものとなるからである。

しかるところ、原告は、係争各年分とも、収入金額については、本件の審理の最終段階に至るまで単に被告の主張を認めるとしていたのみであって、終結直前にその実額の主張をしたものであるが、被告主張の収入金額と原告主張の経費との個別・限定的な対応関係を主張立証していなかったし、また、原告が主張するに至った収入金額がすべての取引先からの総収入金額であることを主張立証していないから、いずれにしても、その点において、原告の実額主張は失当であることを免れない。

(2) 原告がその実額主張の裏付けとする支払帳等は、その記載の体裁や記載方法等から見て会計帳簿といえるようなものではない上、事業関係と家事関係とが混然一体として記載されており、更には記載を消しゴムで消したり、記載の改竄をしたりした痕跡があるなど、その記載内容に正確性を認めることはできない。また、請求書、領収書等の帳簿類の中には、作成年月日の記載がなく、係争年分に係るかどうか明らかでないもの、宛名の記載に不備があり、原告に係るものであるかどうか明らかでないもの、作成者の氏名や押印がないものなどが含まれており、現金出納帳等金銭の出入りを漏らさず記載した帳簿が存在しない本件においてこれらの請求書や領収書等に証拠価値を認めることは不合理である。

第三証拠関係

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求の原因1及び抗弁1は当事者間に争いがない。

二  本件調査の経緯等について

抗弁2の(二)のうち、渡辺係官が昭和五五年六月六日原告宅に赴いたが、原告が不在であったこと、渡辺係官がえつに対し原告に会いたいので原告から都合のよい日を連絡してくれるように伝言をしたこと、その後四か月を経過しても原告が渡辺係官に連絡をしなかったこと、渡辺係官が同年一〇月二七日及び同年一一月四日に原告宅に赴いたが、いずれも原告は不在であったこと、同(三)のうち、渡辺係官が同月七日原告宅に電話して居合せた原告に対し同日午後一時に臨場する旨伝えた上、右時刻に原告宅を訪れ、二階居間に通されたこと、右居間には原告及びえつのほか、民商の会員三名が待機していたこと、同(四)のうち、渡辺係官が原告と電話で連絡を取った上で同月一八日午後一時に原告宅を訪れ、二階居間に通されたこと、右居間には原告及びえつのほか、右(三)の民商会員三名が待機していたこと、原告が渡辺係官に対し「この間の文書を持ってきたか」と尋ねたところ、渡辺係官がそのような文書を提示する必要はない旨回答したこと、以上の事実は当事者間に争いがなく、右事実に、証人渡辺浩治の証言により成立の真正を認め得る乙第二四号証の一、二、同証言、証人村松孝三の証言及び原告本人尋問(第一回)の結果(いずれも後記措信しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。

1  被告は、原告の所得税につき、過去長期間調査を実施していないこと、原告の申告による所得金額が同業者と比べ過少であること及び原告の提出した確定申告書には所得金額の記載はあるが、収入金額及び経費の記載がないことから、原告の申告内容の適否を確認する必要を認め、渡辺係官に対し係争各年分の原告の所得税の調査(本件調査)を命じた。

2  渡辺係官は、昭和五五年六月六日原告宅に赴いたが、原告が不在であったため、居合わせたえつに対し、調査に赴いた旨及び後日連絡されたい旨を原告に告げるよう依頼し、メモ用紙に向島税務署所得税第三部門渡辺と書き、電話番号も書いて渡した。

しかし、原告からは何の連絡もなかったので、渡辺係官は、同年一〇月二七日及び同年一一月四日に原告宅に赴いたが、いずれの日にも原告は不在であったので、渡辺係官は、調査に着手することなく辞去した。

3  同月七日、渡辺係官は、予め原告宅に電話し、電話に出た原告に対し同日午後一時原告宅に臨場する旨伝え、右時刻に原告宅に赴いて二階居間に通されたところ、その場には原告及びえつのほか、村松孝三外二名の墨田民商の会員が待機していた。

渡辺係官は、原告に対し、係争各年分の所得税の調査のため訪れた旨を告げ、調査に直接関係のない墨田民商の会員三名を退席させるよう原告に要求したが、原告は、こちらから頼んで来て貰っているからその必要はないとして右要求に応じなかった。そして、原告が渡辺係官に身分証明書の提示を求めたので、渡辺係官は調査の進行を図るため、「身分証明書を出すから調査に応じて貰えるか」と尋ねたところ、原告は、「調査に応ずるとも応じないともいっていない、身分証明書を見せて貰うのはやめておこう」と述べたので、渡辺係官は、結局、当日は身分証明書の提示をしなかった。原告は、更に渡辺係官に対し、ここに来た行為は行政行為か法律行為かなどという質問をしてきたので、渡辺係官が、法律論争を抜きにして帳簿書類を見せてほしいと要請したところ、原告及び墨田民商の会員らは、「法律論は無用でない」、「自主申告を認めろ」などと、口々にいい始めた。また、渡辺係官は原告に使用している機械の種類を尋ねたが、原告は答えなかった。その後、原告は、渡辺係官に対し、「調査年度及び調査理由を文書にし署長印を押して出して貰いたい、署長でなければ統括官又は渡辺係官が書いた文書でもよい」と要求し、更に、「その文書を受け取ったら、内容を読んで調査を受けるか受けないかを決める」と述べたので、渡辺係官は、要求は一応署に帰って上司に復命するが、そのような文書を出すことはない旨答え、更に帳票書類や経営規模について質問をしたが、原告は未だ調査の段階に入ってないとして答えず、調査が進展しなかったので、渡辺係官は原告宅を辞去した。

4  同月一八日、渡辺係官は、原告宅に電話して家人に同日午後臨場する旨伝えた上、同日午後一時頃原告宅を訪れ、二階居間に通されたところ、原告及びえつの外、同月七日の調査の際と同様に墨田民商会員三名が待機しており、渡辺係官が原告に対し右墨田民商の会員を退席させるよう要求しても、原告はこれに応じなかった。渡辺係官は、原告に身分証明書を示し、調査に協力するよう要請すると、原告は「身分証明書を見たからといって調査を受けるつもりではない」と述べ、更に「この前いった文書を持ってきたか」と尋ねたので、渡辺係官は、そのような文書は書けない旨を述べるとともに、原告に対しては長期間調査をしていないし、申告に係る所得金額が同業者に比べ低すぎるという調査の理由を口頭で告げた。すると、原告は、「調査の理由を書けないのなら、書けないという文書に署長印を押して持ってきてくれ、それを持って国税局や国税庁に行くから同行してくれ」と述べ、その後は、渡辺係官が、機械設備の種類、従業員の人数等を質問しても、「機械はいろいろあるよ」、「従業員は年取ったものばかりと家庭の主婦が働いている」などという程度のことしかいわず、また、渡辺係官が帳票書類の提示を求めても、これに応じなかった。そこで、渡辺係官が原告に対し、経営規模や売上金額、経費等について説明がないのなら、署独自の調査を行わざるを得ないと告げると、原告は、「前回の調査のときに昌立製作所で反面調査にきた税務署員と行きあわせたので、怒鳴りつけてやったら、税務署員は逃げ帰った」などと述べるだけであったので、渡辺係官は独自の調査を行う旨いい置いて原告宅を辞去した。

5  右のとおり、原告から調査に対する協力が得られなかったので、渡辺係官は、原告の受注先、取引銀行等についていわゆる反面調査を実施したが、これと並行して昭和五六年一月二七日に上司の命を受けて他一名の被告所部係官と共に原告宅を訪れ、再度調査に協力するよう要請したが、原告は調査に関する文書を出すよう求めるだけで、調査に協力する様子はなかった。

以上の事実を認めることができる。

なお、証人村松孝三の証言及び原告本人尋問(第一回)の結果中には、渡辺係官は昭和五五年一一月七日の調査の際、原告から身分証明書の提示を求められたにもかかわらず、未だ調査段階に立ち至っていないとしてこれを拒否した旨供述する部分がある。しかしながら、渡辺係官が昭和五五年一一月七日の調査の際に結局身分証明書を提示しなかったことは右3のとおりであるが、所得税調査のため原告宅に赴いた渡辺係官が、未だ調査段階に立ち至っていないなどと、自ら調査の進行を遅らせる結果につながりかねないことを述べるとは考え難く、しかも、右2のとおり、渡辺係官は、昭和五五年一一月七日の調査に至る前に原告の不在中原告宅を訪れた際、自己の向島税務署での所属部門、姓及び同税務署の電話番号を書いたメモをえつに渡している上に、証人渡辺浩治、同村松孝三の各証言及び原告本人尋問(第一回)の結果によれば、渡辺係官は、本件調査に至る前に他の者の所得税調査に立ち会っていた原告と話をしており、お互いに顔を見知っていたことが認められるから、身分証明書の提示を積極的に拒む理由は何ら想定し得ない。そうすると、右3のとおり、渡辺係官は原告が身分証明書の提示を求めた機会に、調査の進行を図るため、身分証明書の提示と引き換えに調査への協力方を依頼したところ、原告がこれに応じなかったために、成り行き上、提示の機会を失してしまったものとしか考えられず、証人村松孝三の証言及び原告本人尋問(第一回)の結果中の前掲各供述は措信し得ない。

また、右各供述中には、渡辺係官は口頭でも調査年度を告げなかったため、原告は、昭和五五年一一月二一日に被告から文書照会を受けた昌立製作所からの連絡で初めて調査年度が係争各年であることを知ったと供述する部分及び渡辺係官は、昭和五六年一月二七日の調査に至って、原告に機械設備及び従業員数について尋ねたが、それまでは、原告の事業内容について質問をしたことはなく、また、帳簿書類や帳票類の提示を求めたことは終始なかった旨供述する部分がある。しかしながら、納税者から事業内容についての説明や帳簿書類等の提示を受けることは、所得税調査を円滑かつ速やかに進める上で最も効率的な方法であり、また納税者に右の説明や提示を行わせるには調査年度を特定する必要があって、これを秘匿したまま調査を行うこと自体困難であるし、秘匿する理由も何も考えられないから、右2及び3のとおり、昭和五五年六月六日以降、所得税調査のため何度も原告宅に赴いた渡辺係官が、四度目の訪問でやっと被告と面接しながら、調査年度を口頭でも告げず、また事業内容の質問や帳簿書類等の提示を求めることもしなかったとは到底考えられないところである。したがって、右各供述を措信することはできない。

更に、右各供述中には、原告は本件調査に際して、渡辺係官に対し、調査年度を文書にし、更に調査の進行中その進行状況についてその都度相互に確認しあって文書に残しておくことを要請したが、調査理由を質して推計課税を受ける結果となることを避けるために、調査理由を明らかにせよとは要求していないとする部分がある。しかし、右各供述によっても、原告は、要請に係る文書を税務当局において作成し渡辺係官がこれを持参することを想定していたというのであるから、原告が要請した文書が原告と渡辺係官との間で調査の都度作成すべきその進行状況の確認の文書であるということは考えられないし、また、右3のとおり昭和五五年一一月七日の調査の開始に当たって口頭で調査年度を告げられた原告が、単に調査年度のみを記載した文書を求めることに拘泥する理由は見出し難い。そうだとすると、右各供述は措信するに足らず、これによって、原告は渡辺係官に対し調査年度と併せて調査理由を文書によって明らかにすべきことを要求したものとする証人渡辺浩治の証言を覆すことはできないというべきである。

その他、右各供述中の前記認定に反する部分は措信し難い。

なお、証人渡辺浩治の証言によれば、渡辺係官は、本件調査の際、部内資料により、また、過去に原告に対する所得税調査を担当したことのある税務職員から直接聞いて、当該税務職員が原告の取引先に調査に赴いた際に原告と出会い、怒鳴られて逃げ帰ったことがある旨を知って、それを原告による調査妨害であると判断し、かつ、そのような調査妨害をする原告は民商の会員であろうと考えたことが認められるところ、原告は、このことから、渡辺係官が民商を好ましからざる団体とみなし、民商会員である原告の調査に際し、偏見に基づいて一般の調査とは異なる特別の対応をしたことが十分に窺われる旨主張する。しかし、税務職員が所得税調査の際にその調査の対象者である納税者から怒鳴られて逃げ帰るということが通常の事態ではないことは明らかであるから、当該納税者である原告に対し調査を行おうとする渡辺係官の税務職員としての立場上、それが脅迫による調査妨害であると判断して執務上の参考事項としたとしても、一概に原告に対する偏見であるとは評価し得ず、また、そのことを理由として原告が民商の会員である可能性に思い至ったとしても、それだけでは、渡辺係官が原告に対する調査に際して、民商ないし民商の会員である原告に対する偏見に基づいて、一般の調査とは異なる特別の対応をしたことを推認することはできない。

三  本件各更正の適否について

1  推計の必要性について

抗弁3の(一)のうち、被告が推計により係争各年の原告の所得金額を算出しこれに基づいて本件各更正をしたことは当事者間に争いがない。

しかして、右二で認定した事実によれば、原告は、被告所部職員である渡辺係官による本件調査に際して、非協力的態度に終始し、要求のあった事業内容についての説明や帳票書類の提示に応じなかったものであるところ、証人渡辺浩治の証言及び弁論の全趣旨によれば、本件調査に対する原告の対応が右のようであったため、被告は、係争各年の原告の所得金額を実額で把握することができず、推計により右金額を算出して本件各更正に及んだことが認められ、右事実関係によれば、本件各更正時において推計の必要性があったものというべきである。

2  推計の合理性について

(一)  被告が本訴において主張する原告の総所得金額(いずれも事業所得の金額)は、係争各年とも、収入金額を基礎金額とし、これに別表第四の一ないし三の比準同業者の一般経費率の平均値を乗じて一般経費を推計し、更に、特別経費中の人件費及び外注加工費についても右収入金額に右比準同業者の人件費率の平均値を乗じて推計し、借入金利子・割引料及び地代はそれぞれ調査によって把握したとする金額をもって、算出したものである。

しかして、証人石峯勤の証言により成立の真正を認め得る乙第一一号証、第一二号証の一ないし三、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一号証、第二号証の一ないし三、第三号証、第四号証の一ないし三、第五号証、第六号証の一ないし三、第七号証、第八号証の一ないし三、第九号証、第一〇号証の一ないし三、第一三号証、第一四号証の一ないし三、公務員作成部分についてはその方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定され、その余の部分は弁論の全趣旨により成立の真正を認め得る乙第一七号証、証人石峯勤の証言及び弁論の全趣旨によれば、

(1) 東京国税局長は、被告並びに向島税務署の所轄区域に隣接する所轄区域を有する荒川税務署、本所税務署、葛飾税務署、江戸川税務署、江東西税務署及び江東東税務署の各税務署長宛てに、昭和五八年八月一二日付で「税務訴訟に関する資料の作成及び報告について」と題する通達を発し、係争各年を対象年分として、<1> 旋盤、ボール盤、フライス盤等の金属工作機械を使用して機械部品受託加工業を営む者で、その材料を専ら受注先から支給されているもの、<2> 青色申告書提出の承認を受けている者で、当該税務署管内に事業所を有するもの、<3> 対象各年分の収入金額が、昭和五二年分にあっては一六〇〇万円以上六七〇〇万円以下、昭和五三年分にあっては一九〇〇万円以上七七〇〇万円以下、昭和五四年分にあっては、二二〇〇万年以上九一〇〇万円以下の範囲内にある者、<4> 年を通じて右<1>の事業を係属している者、<5> 災害等により経営状態が異常であると認められる者又は更正若しくは決定処分がされている者のうち、当該処分について国税通則法若しくは行政事件訴訟法の規定による不服申立期間及び出訴期間の経過していないもの又は当該処分に対して不服申立てがされ、若しくは訴えが提起されて現在審理中であるものに該当しないものを対象者として抽出し(係争各年のすべての年分が右各基準に該当する者のみならず、そのいずれかの年分のみ該当する者であっても当該年分については抽出する。)、a対象者の記号、b収入金額、c一般経費の額、d人件費等の額、e一般経費率(cの金額をbの金額で除したもの)、f人件費率(dの金額をbの金額で除したもの)を報告するよう求めたこと、

(2) 被告及び右各税務署長は右通達に従って対象者を抽出する作業を行い、荒川税務署長は係争各年とも各二名の、葛飾税務署長は係争各年とも各一名の、江東西税務署長は係争各年とも各一名の対象者について右(1)のaないしfの事項を報告し、また、被告を含むその余の税務署長は該当者がない旨の報告をしたこと、

(3) 右(2)の荒川税務署長、葛飾税務署長及び江東西税務署長によって報告された係争各年とも各四名の対象者についての(1)のbないしfの事項の内容は、別表第四の一ないし三のとおりであること、

(4) なお、機械部品等の受託加工業者が受注した加工作業を自ら行う場合の人件費とこれを更に外注先に発注した場合の外注加工費との合計額の収入金額に占める割合については、外注が多くなると右割合も増加する傾向があるものの、一般的には概ね一定であること、

以上の事実を認めることができる。

(二)  そして、右(一)の(1)ないし(3)の事実によれば、本訴で被告が主張する原告の総所得金額(事業所得の金額)に係る推計は、右(一)の抽出に係る対象者を比準同業者とするものであることが明らかであるところ(以下、右抽出に係る対象者を「本件比準同業者」という。)、その抽出基準は、業種の同一性、事業所の近接性、事業規模の近似性(後記3の(一)の原告の係争各年の各収入金額に徴すると、右(一)の(1)の東京国税局長の通達は、収入金額に関し係争各年ともそれぞれ原告の収入金額の概ね二分の一から二倍までの範囲内を基準としたことが認められるところ、これはいわゆる倍半基準に沿うものである。)の点において、原告との間に合理的と認められる程度の類似性を有し、その抽出に当たって恣意が介在する余地は乏しく、その抽出件数は同業者の個別性を捨象するに足りるものと考えられ、かつ、右対象者はいずれも年間を通じて事業を継続する青色申告者であって、その所得金額が確定したものであるから、右(一)の(1)のbないしfの事項を算出する基礎となる資料の正確性も担保されているものというべきである。また、右(一)の(4)の事実によれば、一定の受注に対し自ら加工業をした場合の人件費とこれを更に外注した場合の外注加工費とでは、当該受注に係る収入金額に対する割合としては有意の差はないものと推認することができる。これらの事情を総合すると、他に特段の事情がない限り、原告の収入金額を基礎金額とし、本件比準同業者に係る一般経費率及び人件費率の各平均値を用いて原告の係争各年分の事業所得に係る一般経費の額並びに人件費及び外注加工費の額を推計することには十分に合理性があるものと認めることができる。

(三)(1)ア 原告は、係争各年当時、その使用していた機械は、大正一一年製造の研磨機、昭和一七年製造の旋盤、昭和一八年製造のフライス盤等、その大多数が平均耐用年数を超えた旧式の手動式のものであって精度が極端に悪いため、作業能率を妨げ、また、人手を多く要していたのみならず、従業員の年齢構成が高齢者中心となっていた上、係争各年中の延べ一四名の従業員のうち三名を除いてはいわゆる素人工であって質の点でも劣っていたにもかかわらず、原告は、その温情主義からこれら従業員を整理せずに抱え込んだままで、しかもその年齢にみあった生活給的観点を加味した高額の賃金の支払をしており、原告の経営を圧迫する要因となっていたと主張し、これを前提として、このような使用機械の旧式性、従業員の年齢、質的構成及び高給化は、同業者中でも特異な存在であって、業者間に通常存在する程度の営業条件の差異とはいい得ないものである旨主張する。

イ そして、原告本人尋問(第一回)の結果により成立の真正(甲第八号証については原本の存在及びその成立の真正)を認め得る甲第四号証の一、二、第七ないし第一一号証、第九五号証の二、三、右尋問結果により昭和五九年一〇月三日に原告代理人が原告方工場の外観及び内部の状況並びに同工場内の機械を撮影した写真であることが認められる甲第三号証の一ないし三、弁論の全趣旨により昭和六二年四月二日に原告代理人が原告方工場内でグローブバルブボンネット及びグローブバルブボディの各加工工程及び右加工に使用される工具及び機械並びに右工場内の旋盤を撮影した写真であることが認められる甲第七四号証の一ないし六一、証人杉山治久の証言により成立の真正を認め得る甲第六号証、同証言、原告本人尋問(第一、第二回)の結果(後記措信しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すると、<1> 係争各年当時、原告がその事業に使用していた工作機械のうち最も新しいものは昭和四八年一〇月製造の旋盤であり、また、最も古いものは昭和一七年七月製造の旋盤であるが、いずれも効率の悪い手動式のものであり、また、その多くは経年による摩耗等により精度が劣っていたために、製品の加工に時間と人手を要したこと、<2> 原告方の従業員(臨時工としてごく短期間雇用したものを除く。なお、以下、単に「従業員」という場合には、臨時工を含まない。)は、昭和五二年が一三名(ただし、内一名については同年七月から雇用したもの、更に別の一名については同年七月から同年八月までの間のみ雇用したものである。)で、その平均年齢は約四六歳、五五歳以上の者は四名であり、昭和五三年が一一名で、平均年齢は約五〇歳、五五歳以上の者は四名であり、昭和五四年が一二名(ただし、内一名は同年一〇月から雇用したものである。)であり、平均年齢は約五一歳、五五歳以上の者は五名であったことが認められる(原告本人尋問(第一回)の結果のうち右認定に反する部分は措信し難い。)。

ウ しかし、右各従業員のうち三名を除いてはいわゆる素人工であって質の点でも劣っていたとの主張については、原告本人尋問の結果中に、旋盤又はフライス盤の操作に関し、段取りから加工まで一人でできる者は係争各年中三名のみであり、他は段取りや工具の準備が整った状態で初めて加工をすることのできる全くの素人であるとして、これに沿う供述をする部分があるが、右認定事実及び前掲甲第七号証によれば、右各従業員のうち原告方での勤続年数が一〇年以上となる者が、昭和五二年及び昭和五三年においては各七名、昭和五四年においては八名勤務していたことが認められるところ、前掲乙第一七号証によれば、段取り等ができなくとも、特定の加工作業に長期間従事して慣れにより優れた加工技術を獲得する者もあることが認められるから、単に段取り等の作業を行うことができないからといって、それだけでその従業員の質が劣るとはいえず、更に前掲甲第六号証によれば、昭和五九年当時においてではあるが、原告方が高度な機械加工技術を有するものと評価されていることが認められることからしても、原告の従業員が質的に劣っていたものとは考え難い。したがって、右主張に沿う原告本人の右供述は採用し難く、他に右主張を認めるに足りる的確な証拠はない。

また、原告が、右各従業員に対し高額な賃金の支払をしていたとの点については、その主張に鑑み、原告の主張3において主張する別表第八の賃金の支払をしていたことを前提とするものであると解されるところ、右前提とする事実を認め難いことは後記3の(四)のとおりである。

エ そうすると、右アで原告が前提として主張する事実のうち、係争各年当時、原告がその事業に使用していた工作機械は旧式で効率の悪い手動式のものであり、また、その多くは精度が劣っていたために、製品の加工に時間と人手を要したこと、及び原告方従業員の年齢構成は右のとおり比較的高いということは認められるが、その余の事実を認めることはできない。

そして、所得税法が推計課税を認めている以上、合理的な基準によって抽出された比準同業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は、比準同業者の経費率、人件費率、所得率等の平均値を求める過程で包摂され、その平均により捨象されているというべきであるから、右のような工作機械の効率や精度及び従業員の年齢構成が、右(二)の特段の事情に該当するというためには、かかる事情が原告と事業規模の近似する同業者には通常みられない特異な事情であって、かつ、その事情が存在するために、原告の経費率、人件費率等が右同業者の平均値とかけ離れた数値となることについての蓋然性が存在することが必要であるものと解すべきである。

そこで、本件につきこの点について検討するに、まず、前掲甲第八ないし第一一号証、原告本人尋問の結果(第一回)によれば、グローブバルブボディ及びグローブボンネット各一個の平均加工時間につき、原告の事業所においてその使用機械で加工を行う場合には前者につき二〇五一秒、後者につき一〇二〇秒を要するのに対し、昌立製作所においてその使用する専用機で同じ作業を行う場合には前者につき三八一秒、後者につき一一四秒を要するのみであることが認められる。しかし、右尋問結果及び弁論の全趣旨によれば、昌立製作所の専用機は一定サイズの規格品を一時に大量に加工するに適した機械であって、右平均加工時間もそのような作業をする場合のものであり、ごく僅かでもサイズの異なる製品の加工をしようとした場合には、右の平均加工時間はもはや妥当しないこと、これに対し、多種にわたるサイズ・規格の製品をごく少量ずつ受注して、その加工を行っており、右の平均加工時間もそのような作業をする場合のものであることが認められるのであって、そうだとすれば、作業を行うにつき要する時間が異なるといっても、その作業内容も異なっているのであるから、このことから直ちに原告の使用機械の効率や精度が同業者に通常みられない程度に劣っていると結論付けることはできないといわなければならない。のみならず、公務員作成部分についてはその方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定され、その余の部分は弁論の全趣旨により成立の真正を認め得る乙第一五号証及び原本の存在と成立に争いのない乙第一六号証によれば、昌立製作所は従業員二百数十名を擁して高圧鍛造バルブ等の一貫生産を行い、昭和五八年五月一日から昭和五九年四月三〇日までの事業年度における所得金額として一億一〇〇〇万円余を計上する企業であることが認められるから、たとえ、原告と同様の加工作業を行うことがあるとしても、その事業形態や規模の点において昌立製作所が原告と類似性を有する同業者であるということはできず、したがって、右の平均加工時間の相違から、原告の使用機械の効率や精度が事業規模の近似する同業者に通常みられない程度のものであるということもできない。

また、証人杉山治久の証言中には、係争各年当時、原告の有していた機械設備等の水準は墨田区の他の零細中小企業のうちの劣っている方から一ないし二割の範囲内に属するとする部分が存在し、また、原告本人尋問(第一回)の結果中には、原告には、従業員の整理に繋がるために最新式のコンピュータ制御によるNC旋盤を導入することができなかったが、従業員数が同じ程度の町工場は一般にNC旋盤を導入した上で事業規模を拡大しているとか、家族でやっている家内工業的な町工場でもNC旋盤が導入されているとか供述する部分が存在する。しかし、右各供述には、いずれも業種、業態、事業規模等の点において原告と近似する同業者を比較の対象とするという意識がなく、漠然と墨田区ないしその近辺の零細中小企業者ないしは町工場を念頭において述べているに過ぎないことが右各供述自体から窺われるから、右各上述によっても、原告の使用機械の効率や精度が事業規模の近似する同業者に通常みられない程度のものであるとまでは認めることができない。

他に、原告の使用する工作機械の効率や精度及び原告の雇用する従業員の年齢構成が、原告と事業規模の近似する同業者には通常みられない程度の特異なものであり、かつ、かかる事情が存在するために、原告の経費率、人件費率等が右同業者の平均値とかけ離れた数値となることについての蓋然性が存在することを認めるに足りる証拠はない。

そうすると、原告の右アの主張は失当である。

(2) また、原告は、本件比準同業者について、その使用する主力機械に基づけば、比準同業者Aは原告と同様普通旋盤を主力機械とする通称旋盤屋であるが、同Bはタレット旋盤とネジ切り機を主力機械として自己のみでボルトの生産をすることのできる通称ボルト屋、同Cはタレット旋盤を主力機械とする通称タレット屋、同Dはタッピングを主力機械とする通称タッピング屋であると判断されるところ、これらの業者は、その特性の違いにより人件費の割合は全く異なるのが通常であり、所得の推計に当たって両者を同業者として包括することは到底できないと主張する。

そして、原告本人尋問(第一回)の結果中には、比準同業者BないしDについての個別具体的な受託加工作業の内容について右主張と同旨である旨を述べた上、タレット屋やタッピング屋の場合には、一人の作業員が同時に何台もの機械を扱うことができるのに対して、旋盤屋の場合には一人の作業員は一時に一台の機械しか扱うことができないから、人件費率が異なり、タレット屋の方が生産効率がよいのにもかかわらず、受託加工工賃の点では同じく扱われている旨右主張に沿う供述をする。

しかし、仮に比準同業者AないしDの個別具体的な受託加工作業の内容が右供述のとおりであるとしても、右供述中、旋盤屋とタレット屋やタッピング屋とでは人件費率が異なり、後者の方が生産効率がよいのにもかかわらず、受託加工工賃の点では同じく扱われているとする部分は、前掲乙第一七号証の供述記載に照らし、また、右(一)で認定したとおり、比準同業者AないしDの人件費率は昭和五二年分が五四・七二パーセントから六四・四九パーセントまで、昭和五三年分が五八・三三パーセントから六六・〇一パーセントまで、昭和五四年分が六〇・七一パーセントから六六・二八パーセントまでの狭い範囲内に分布している(しかも、右各年とも人件費率の最も高い比準同業者Dは、原告の供述によれば、生産効率のよいはずのタッピング屋である。)ことに鑑みて、到底措信することができない。

(3) 他に、右(二)の被告の推計の合理性を否定するような特段の事情が存するとの主張立証はないから、右推計に合理性がないとする原告の主張は失当である。

3  原告の実額主張について

原告は、原告が作成していた売上帳、支払帳、賃金帳、日新工業帳並びに原告が保存していた請求書、領収書等の帳票類によれば、係争各年の原告の事業所得金額の実額及びその算出根拠は別表第七のとおり(そのうちの人件費(従業員及び臨時工の給料賃金)の明細は別表第八の、外注加工費の明細は別表第九のとおり)であると主張する。

そこで、まず、本訴における係争各年の原告の事業所得の算出過程に係る被告の主張のうち、本件比準同業者の平均率を用いて推計を行っている一般経費並びに人件費及び外注加工費の部分並びに右推計の基礎数値である係争各年の原告の収入金額の部分について、原告の右実額主張の当否を検討する。

(一)  収入金額について

係争各年の原告の収入金額の実額を証するための証拠としては売上帳(甲第一二一号証)が提出されており、成立に争いのない甲第一二二号証には、右売上帳はえつが作成したもので、原告の売上金額のすべてを記載したものである旨の原告の供述記載がある。そして、右売上帳に基づいて係争各年ごとの原告の収入金額を取引先別に集計した結果は別表第一〇のとおりであって(なお、右甲第一二二号証添付別表のうち別表第一〇と相違する部分は右売上帳の記載に基づいていないものと認められる。)、別表第三の被告の主張する収入金額と照らし合せると、随所に相違があることが認められる。

ところで、成立に争いのない乙第一八号証によれば、原告は、本件各更正に対する審査請求の時点では、係争各年の売上金額に関する証拠資料は保存していないとして提出しなかったことが認められるほか、本件訴訟記録に徴すると、原告は、本件訴訟において、その係争各年の収入金額は別表第三の金額のとおりであるとする被告の主張を当初から認めており、また、原告本人尋問(第二回)において、原告は係争各年の売上帳を保存しているが、それに記載されている金額は被告主張の金額と合っている旨供述し、更に原告から提出された後記総勘定元帳に記載されている係争各年の原告の売上金額は別表第三の金額と合致しているところ(なお、証人土屋道子の証言によれば、右総勘定元帳の売上金額の記載は被告の主張に拠ったものであることが認められる。)、原告は、第四二回口頭弁論期日(最終口頭弁論期日)において右売上帳(甲第一二一号証)を提出し、その記載に沿った収入金額の主張をするに至ったものである。以上のような経緯に鑑み、更に、原告が審査請求及び本件訴訟の各段階においてその売上帳を提出することについては何ら支障があるものとは考え難いこと、右売上帳は係争各年の各月別に各取引先からの入金金額と入金方法とを記載した体裁であるが、入金方法につき現金、手形、小切手等の別があるのにこれらを区分けすることなく記載されている上、現金出納帳、受取手形帳、受取小切手帳等その照合を行うことのできる会計帳簿は提出されていないこと、その作成状況の詳細を認めるに足りる証拠はないことなどを併せ考えると、その記載を直ちに措信することはできず、むしろ、前掲各証拠に照して原告の収入金額は別表第三の金額であるものと認められる。

(二)  一般経費について

(1) 右(一)のとおり、原告の収入金額は被告の主張する別表第三の金額であるものと認められるところ、被告は原告の経費の実額主張に関し、被告は調査によって把握できた限りの収入金額を推計の基礎としているのであって、それが原告の収入金額のすべてであると主張しているわけではないから、原告が実額主張をする場合においては、右収入金額がすべての取引先からの総収入金額であることまで主張立証するか、又は、右収入金額と原告の主張する経費との個別・限定的な対応関係についてまで主張立証することを要すると主張する。

しかしながら、課税庁は当該課税処分の適法性について立証責任を負い、したがって、当該課税処分に係る所得金額を算出する根拠となる事実である収入金額及び経費の額の双方についてもそれぞれ立証責任を負うものであることに鑑みると、被告の右主張は相当ではなく、具体的に収入金額に捕捉漏れがあることが明らかとなったとか、原告の経費実額の主張が、その収入額とバランスを失することが明らかであるような場合を除いて、その主張に係る収入金額はそれが原告の全収入金額であるものとして取り扱われるべきものと解されるから、被告の前記主張は失当である。

(2)ア 係争各年の原告の一般経費の実額を証するための証拠としては、請求書、領収書等の帳票類(甲第二一ないし第二四号証、第二九ないし第三六号証、第四〇ないし第四三号証、第四五号証、第四八ないし第五四号証、第五八ないし第六一号証、第六三号証、第六五ないし第七二号証、第八一号証、第一一二ないし第一一四号証、第一一六ないし第一一九号証の各枝番中に含まれている。)の外、支払帳(甲第一〇八、第一九、第三八、第五六号証)が提出されている。

イ ところで、原告本人尋問の結果(第二回)により成立の真正を認め得る甲第一〇〇号証及び右尋問結果によれば、右支払帳は、原告の事業に係る金員の管理を担当していたえつが作成したもので、各月ごとに三郷工場分と原告宅分とに分けて、三郷工場分はえつが毎月末に原告の持参する要支払額のメモに基づいて原告にその支払を要する金員を渡す際にその日付で(ただし、原告が自ら所持する金員で既に支払を終えたものについてはその支払に係る日として右のメモに記載された日付で)記載し、原告宅分はえつが支払をする都度その日付で記載したものであるとされている。しかしながら、右各証拠及び右甲第一九、第三八、第五六号証、証人杉山治久の証言によれば、右支払帳は、日付と支払先又は支払に係る事項及び金額とが雑然と書き連ねてあるだけのもので、現金手許在高の記載はなく、また、記載順もえつの独自の方式に従ったもので必ずしも日付の順とされているわけではなく、かつ、随所に訂正が施されており、更に、原告の事業関係の支出と思われるものの外、家事関係の支出と思われるものも何ら区分されることなく多数混然と記載されていることが認められ、右支払帳は、その体裁から現金出納帳その他正規の会計帳簿といえないことはもとより、全体として客観性が極めて乏しいものであって、他の者がその記載の正確性を検証することはほとんど不可能なものであるといわざるを得ない。さらに、本訴において、原告が右支払帳に基づいてした経費の支出の主張につき、被告から誤りである旨の指摘を受け、あるいは原告自らが後に発見した帳票類と符合しないとして撤回又は訂正したものがあることは本件記録上明らかである。加えて、前掲各証拠によれば、右支払帳にはその記載の一部を砂消しゴム等を用いて消去した痕跡や、更にその上に書き足したと思われる記載が存在するところ、前掲甲第一〇〇号証の供述記載及び原告本人尋問(第二回)の供述中には、原告が本件各処分に対して審査請求をして右支払帳を国税不服審判所に提出した際に、日新工業株式会社に対する外注費の支出に係る記載の一部を同社に頼まれて消去し、さらに政党に対するカンパに係る支出の記載も本件とは無関係と考えて消去した外、書き損じを消去した箇所もあるとする部分が存在する。しかし、公務員作成部分についてはその方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定され、その余の部分は弁論の全趣旨により成立の真正を認め得る乙第二九号証及び原告本人尋問(第二回)の結果(後記措信しない部分を除く。)によれば、原告は、右支払帳をコピーした上、その一部を切り取ったものを更にコピー直したものを国税不服審判所に提出し、支払帳の原本は提出しなかったこと、右の切取り加工が施された部分はほとんど全ページに及んでいたこと(原告本人尋問(第二回)の結果中、この認定に反する部分は措信し難い。)が認められる。原告が右支払帳を国税不服審判所に提出するに当たってその一部を消去する必要が生じたとしても、コピーを提出するのであれば支払帳の原本にまで消去を施す必要はないはずであるし、また、国税不服審判所に提出した際に消去した部分と原本に消去を施した部分とが一致しているものとも認め難い。したがって、右甲第一〇〇号証の供述記載及び原告本人尋問(第二回)の供述は直ちに措信し難く、原告は、右支払帳を本訴において提出するに当たって、その原本に何らかの改竄を加えたものであることが窺われる

そうすると、右支払帳の記載を一般に信用することはできず、特段の事由のない限り、右支払帳の記載のみによって経費の支出の事実を認めることはできないといわなければならない。

ウ なお、本件では、原告主張の各経費の支出のほとんどについて出金伝票又は振替伝票が提出され(甲第二一ないし第二四号証、第二九ないし第三六号証、第四〇ないし第四三号証、第四五号証、第四八ないし第五四号証、第五八ないし第六一号証、第六三号証、第六五ないし第七二号証の各枝番中に含まれている。)、また、係争各年ごとに総勘定元帳が提出されている(甲第二〇、第三九、第五七、第七五ないし第七七、第九二ないし第九四、第九七ないし第九九号証)。

しかし、証人土屋道子の証言及び弁論の全趣旨によれば、本訴提起の後である昭和六二年頃に、墨田民商の事務局員であった同証人が、係争各年の原告の事業の経理内容を明らかにするものとして、原告の保存する請求書等の帳票類及び右支払帳その他の帳面の記載並びに原告及びえつからの聞取りに基づいて、右出金伝票又は振替伝票を作成し、更にこれに基づいて右総勘定元帳を作成したものであること、右総勘定元帳は、甲第二〇号証が昭和五二年分、甲第三九号証が昭和五三年分、甲第五七号証が昭和五四年分に係るものであり、甲第七五ないし第七七、第九二ないし第九四、第九七ないし第九九号証は、本訴の進行に伴って、当初の甲第二〇、第三九、第五七号証の記載に誤りがあったとして、それぞれ所要部分に訂正を加えてその部分のみを提出し直したものであることが認められる。そうすると、右出金伝票又は振替伝票及び総勘定元帳の記載の証明力は、その記載の基となった各帳票類又は支払帳のそれを超えるものでないことは明らかであり(その作成の経過に鑑みて、その記載はむしろ各経費の支出に係る原告の主張を補充する意義を有するものと理解される。)、そして、右支払帳の記載は一般に信用性の低いものであることは右アのとおりであるから、右支払帳の記載のみに基づいて作成された各伝票及び総勘定元帳のうちのの右支払帳の記載のみに基づいて記載された部分も、特段の事由のない限り、信用することはできない。

エ 右アの請求書、領収書等の帳票類のうちには、宛名を「上様」とし若しくはその記載がないもの、作成日付の全部若しくは一部の記載がないもの、作成者の名下の印若しくは訂正印がないもの又は標題等に不備があるものが含まれている。しかし、後記(3)以下に個別に摘記するものを除いては、他の関係書証により、又は原告が当該帳票類を本訴において提出した状況等に照らして、当該帳票類に係る経費の支払の事実を認めることができるものというべきである。

オ そこで、以下、右イないしエで述べたことを前提として、本件で提出された各証拠により係争各年の原告の事業所得に係る一般経費の額を実額で認めることができるか否かについて検討する。

(3) 昭和五二年分

ア 材料費

別表第一一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る材料費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

イ 荷造運賃

別表第一二の書証欄掲記の証拠(弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る荷造運賃として同表記載の金額を支出したことが認められる。

ウ 消耗工具費

別表第一三の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る消耗工具費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

エ 法定福利費

a 別表第一四の一の書証欄掲記の証拠(弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る法定福利費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第一四の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

なお、後記のとおり、原告の従業員に係る給料賃金の額の実額を認めることはできない上、原告は、その従業員に係る報酬額を偽って健康保険料及び厚生年金保険料の事業主負担部分の支払をしていたものであるから、右支払が健康保険料及び厚生年金保険料の事業主負担部分に係るものであるとはいえ、確実な証拠に基づかないで、その支払額を認定することは困難である。

オ 手数料

別表第一五の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る手数料として同表記載の金額を支出したことが認められる。

カ 福利厚生費

別表第一六の支出については、支払帳にその記号があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

キ 減価償却費

別表第一七の減価償却費については、振替伝票及び減価償却費の計算書が提出されているが(甲第二七号証の一のイ及びロ)、その償却額の算出の基礎となる各数値が真実と合致するものであることを認めるに足りる証拠はないから、その主張に係る償却額を認めることはできない。

ク 修繕費

a 別表第一八の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る修繕費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第一八の二の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

ケ 消耗品費

a 別表第一九の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨にによりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る消耗品費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第一九の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

コ 水道光熱費

a 別表第二〇の一の書証欄掲記の各証拠(甲第八一号証の一ないし七は成立に争いがなく、その余はいずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の原告宅及び三郷工場に係る水道光熱費として同表記載の金額を支出したことが認められる。そして、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、水道光熱費のうち、電気代については九割に相当する額、水道代については七割に相当する額、ガス代については三割に相当する額をそれぞれ原告の事業に係る経費とすることが相当であると認められるところ、右各割合に相当する額は、それぞれ同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表第二〇の二の各支出については、ガス代を除く外、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが(ガス代については支払帳にその個別的な記載もない。)、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

サ 租税公課等

a 別表第二一の一の書証欄の掲記の各証拠(甲第三二号証の二三及び二四の各ロは成立に争いがなく、甲第三二号証の一〇のロは官公署作成部分の成立に争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の部分の成立の真正が認められ、その余はいずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る租税公課及び事業上必要な墨田民商への会費等として同表記載の金額を支出したことが認められる。なお、甲第三二号証の四及び五の各イの三郷工場の土地建物に係る各固定資産税は、昭和五一年度第四期分に係るもので、固定資産税納税通知書その他その支出の事実を裏付ける明確な書証が存在しないが、昭和五一年度は地方税法三四六条六号の基準年度に、昭和五二年度は同条七号の第二年度にそれぞれ該当し、原則として、昭和五二年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価額によるものであるから(同法三四九条一項、二項)、甲第三二号証の九のロ及びハによって認めることのできる昭和五二年度の各期分の固定資産税額とほとんど差異のない金額を昭和五一年度第四期分の固定資産税として支払った事実は、支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるがこれを認めることができる。

そして、後記4の(五)で認定する原告宅の事業供用割合及び原告本人尋問の結果(第二回)並びに弁論の全趣旨によれば、右各租税公課のうち、原告宅に係る固定資産税等については五二分の四〇に相当する額を、三郷工場の土地建物に係る固定資産税については二分の一に相当する額をそれぞれ原告の事業に係る経費とすることが相当であると認められるところ、右各割合に相当する額は、それぞれ同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表二一の二の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

シ 交際接待費

a 別表第二二の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五二年分の事業所得に係る交際接待費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第二〇の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

ス 保険料

a 別表第二三の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る保険料として同表記載の金額を支出したことが認められる。なお、甲第三四号証の一及び三の各イの自動車保険保険料についてはその支出の事実を直接裏付ける明確な書証が存在しないが、前者については甲第三四号証の一一及び八の各ロを、後者については甲第三四号証の一二のロ及び同号証の八のハを併せ考えることにより、支払帳に基づく振替伝票又は出金伝票の記載のみによるものではあるが、その支出の事実を認めることができる。また、甲第三四号証の三五、三九及び四二の各イの各月掛店舗総合保険保険料(日動火災)についても、その支出の事実を直接裏付ける明確な書証が存在しないが、後掲甲第五三号証の一四のロを併せ考えることにより(右証拠によると、原告は、日動火災海上保険株式会社の証券番号三一〇二二一八二の月掛店舗総合保険につき、昭和五三年五月一七日に八回目に当たる同年五月分の保険料として八八八〇円を支払っていることが認められるから、遡って一ないし三回目の支払月に当たる昭和五二年一〇月ないし一二月においても、同金額の保険料を支払った事実が推認される。)、支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるが、その支出の事実を認めることができる。

しかして、後記4の(五)で認定する原告宅の事業供用割合及び弁論の全趣旨によれば、右各保険料のうち、月掛店舗総合保険保険料については五二分の四〇に相当する額を原告の事業に係る経費とすることが相当であると認められるところ、右割合に相当する額は同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表第二三の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

c 別表第二三の三の書証欄掲記の各証拠(いずれも成立に争いがない。)及び弁論の全趣旨によると、原告は、昭和五二年中に、小規模企業共済掛金として、同表記載の金額を支払った事実を認めることができる。しかし、所得税法七五条(昭和五二年分については昭和五二年法律第八四号による改正前のもの、昭和五三年、昭和五四年分については昭和五五年法律第五三号による改正前のもの)によれば、小規模企業共済掛金の支払額は、所得控除として総所得金額等から控除すべきものとされており、これを事業所得に係る必要経費に算入することはできない。

セ 通信費

a 別表第二四の一の書証欄掲記の各証拠(甲第三五号証の四及び五の各ロ及びハ、同号証の七、九、一〇、一二、一三、一五、一六、一八、二〇ないし二二、二四、二五、二七、二八、三〇、三一、三三の各ロは成立に争いがなく、甲第三五号証の一のロないしハは官公署作成部分の成立に争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の部分の成立の真正が認められ、その余はいずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る通信費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第二四の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

ソ 雑費

別表第二五の書証欄掲記の証拠(弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五二年分の事業所得に係る雑費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

(4) 昭和五三年分

ア 材料費

a 別表第二六の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る材料費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第二六の二の梅澤地金店に対する支出については、その事実を証するために提出された納品書(甲第四〇号証の二二のロ)に作成年の記載がないので、右証拠及びこれに基づく出金伝票によっては昭和五三年中にその支出がされたことを認めることができず、他に同年中に右支出がされたことを認めるに足りる証拠はない。また、内藤工業・大同鋼材に対する支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

イ 荷造運賃

別表第二七の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る荷造運賃として同表記載の金額を支出したことが認められる。

ウ 消耗工具費

a 別表第二八の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る消耗工具費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第二八の二の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

エ 法定福利費

a 別表第二九の一の書証欄掲記の証拠(ただしメモ書き部分を除く。いずれも成立に争いがない。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る法定福利費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第二九の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイおよびウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

なお、健康保険料及び厚生年金保険料の事業主負担部分の支払に係るものも、確実な証拠に基づかないで、その支払額を認定することは困難であることは、右(3)のエのbのとおりである。

オ 手数料

別表第三〇の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る手数料として同表記載の金額を支出したことが認められる。なお、甲第四四号証の一一の支出は、今泉事務所に対する同年一一月分及び一二月分の報酬の支払であって、その支出の事実を直接裏付ける明確な書証が存在しないが、右(2)のオ及び後記(5)のオのとおり、昭和五二年及び昭和五四年において同事務所に対する一月分から一二月分までの報酬の支払をしていることに鑑み、昭和五二年においても同様であったことが推認されるから、支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるが、その支出の事実を認めることができる。

カ 福利厚生費

a 別表第三一の一の書証欄掲記の証拠(弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る福利厚生費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第三一の二の大和屋菓子店に対する支出については、支払帳にその記載がある外、右事実を証するために請求書(甲第四二号証の二のロないしト)が提出されているが、右請求書には作成者の記載がないので右証拠及びこれに基づく出金伝票によってはその支出の事実を認めることができず、また、支払帳の記載が直ちに信用できないことは右(2)のイのとおりであって、他に右支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

キ 減価償却費

別表第三二の減価償却費については、振替伝票及び減価償却費の計算書が提出されているが(甲第四六号証の一のイ及びロ)、その償却額の算出の基礎となる各数値が真実と合致するものであることを認めるに足りる証拠はないから、その主張に係る償却額を認めることはできない。

ク 修繕費

a 別表第三三の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る修繕費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第三三の二の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

ケ 消耗品費

a 別表第三四の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る消耗品費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第三四の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

コ 水道光熱費

a 別表第三五の一の書証欄掲記の各証拠(ただしメモ書部分を除く。甲第五〇号証の二五、二七、三一及び三三の各ロは成立に争いがなく、その余は弁論の全趣旨により成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の原告宅及び三郷工場に係る水道光熱費として同表記載の金額を支出したことが認められる。そして、右(3)のコのaのとおり、水道光熱費のうち、電気代については九割に相当する額、水道代については七割に相当する額をそれぞれ原告の事業に係る経費とすることが相当であるところ、右各割合に相当する額は、それぞれ同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表第三五の二の各支出については、ガス代を除く外、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが(ガス代については支払帳にその個別的な記載もない。)、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

サ 租税公課等

a 別表第三六の一の書証欄掲記の各証拠(甲第五一号証の五のロ及びハ、同号証の一八のロは成立に争いがなく、甲第五一号証の一一のロは官公署作成部分の成立に争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の部分の成立の真正が認められ、その余はいずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る租税公課及び事業上必要な墨田民商への会費等として同表記載の金額を支出したことが認められる。なお、甲第五一号証の八及び一七並びに同号証の二六のイの三郷工場の家屋に係る各固定資産税は、昭和五三年度第一期ないし第三期分に係るもので、固定資産税納税通知書その他その支出の事実を裏付ける明確な書証が存在しないが、右(3)のサのaと同様、支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるが右支出の事実を認めることができる。

そして、右(3)のサのaのとおり、右各租税公課等のうち、原告宅に係る固定資産税等については五二分の四〇に相当する額を、三郷工場の土地建物に係る固定資産税については二分の一に相当する額をそれぞれ原告の事業にかかる経費とすることが相当であると認められるところ、右各割合に相当する額は、それぞれ同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表第三六の二のうち自動車検査登録印紙代の支出については、支払帳にその記載がある外、右事実を証するために領収書(甲第五一号証の二三のロ)が提出されているが、右領収書には作成年の記載がないので右証拠及びこれに基づく出金伝票によっては昭和五三年中にその支出がされたことを認めることができず、また、支払帳の記載が直ちに信用できないことは右(2)のイのとおりであって、他に同年中に右支出がされたことを認めるに足りる証拠はない。更に、同表のその余の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

シ 交際接待費

a 別表第三七の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五三年分の事業所得に係る交際接待費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第三七の二の支出については出金伝票が作成されているが、その記載が直ちに信用できないことは右(2)のウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

ス 保険料

a 別表第三八の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る保険料として同表記載の金額を支出したことが認められる。なお、甲第五三号証の一のイ、同号証の三、同号証の六のイの各自動車保険保険料についてはその支出の事実を直接裏付ける明確な書証が存在しないが、前者については甲第五三号証の六のロを、後二者については甲第五三号証の九のハを併せ考えることにより、支払帳に基づく振替伝票又は出金伝票の記載のみによるものではあるが、その支出の事実を認めることができる。また、甲第五三号証の二、五、八、同号証の一一のイの各月掛店舗総合保険保険料(日動火災)についても、その支出の事実を直接裏付ける明確な書証が存在しないが(甲第五三号証の一一のロの領収書は、領収印の日付が不鮮明であるが、その証券番号、払込回数、払込月分の記載からみて、昭和五四年四月分の支払に係るものと認められる。また、甲第五三号証の二六の出金伝票に係る支出については、甲第七一号証の二六のロの領収書が、その領収印の日付、証券番号、払込回数、払込月分の記載からみて、右支出に係るものと認められる。)、甲第五三号証の一四のロを併せ考えることにより(右証拠によると、原告は、日動火災海上保険株式会社の証券番号三一〇二二一八二の月掛店舗総合保険につき、昭和五三年五月一七日に八回目に当たる同年五月分の保険料として八八八〇円を支払っていることが認められるから、遡って四ないし七回目の支払月に当たる昭和五三年一月ないし四月においても、同金額の保険料を支払った事実が推認される。)、支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるが、その支出の事実を認めることができる。更に、甲第五三号証の三〇の月掛店舗総合保険保険料(日動火災)についても、その支出の事実を直接裏付ける明確な書証が存在しないが、甲第五三号証の三三のロを併せ考えることにより(右証拠によると、原告は、日動火災海上保険株式会社の証券番号三一三八〇六六二の月掛店舗総合保険につき、昭和五三年一一月一七日に二回目に当たる同年一一月分の保険料として八八八〇円を支払っていることが認められるから、遡って一回目の支払月に当たる同年一〇月においても、同金額の保険料を支払った事実が推認される。)、支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるが、その支出の事実を認めることができる。

しかして、(3)のスのaのとおり、右各保険料のうち、月掛店舗総合保険保険料については五二分の四〇に相当する額を原告の事業に係る経費とすることが相当であると認められるところ、右割合に相当する額は同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表第三八の二の各支出については、一二月三一日付の「セドリック」を除き、支払帳にその記載があり、これに基づいて振替伝票又は出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

c 別表第三八の三の書証欄掲記の各証拠(いずれも成立に争いがない。)及び弁論の全趣旨によると、原告は、昭和五三年中に、小規模企業共済掛金として、同表記載の金額を支払った事実を認めることができるが、右金額を事業所得に係る必要経費に算入することができないことは、右(3)のスのcのとおりである。

セ 通信費

a 別表第三九の一の書証欄掲記の各証拠(甲第五四号証の一、三、四、六、七、九、一二、一三、一六、一七、一九、二〇、二二、二三、二五、二六、二八、二九、三一、三二、三四、三五の各ロ及び同号証の一四のロ、ハは成立に争いがなく、その余はいずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五三年分の事業所得に係る通信費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第三九の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

(5) 昭和五四年分

ア 材料費

a 別表第四〇の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る材料費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第四〇の二の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

イ 荷造運賃

別表第四一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る荷造運賃として同表記載の金額を支出したことが認められる。

ウ 消耗工具費

a 別表第四二の一の書証掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る消耗工具費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 原告本人尋問の結果(第二回)によれば、別表第四二の二の支出の事実は存在しないことが認められる。

エ 法定福利費

別表第四三の書証欄掲記の証拠(ただしメモ書き部分を除く。いずれも成立に争いがない。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る法定福利費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

オ 手数料

別表第四四の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る手数料として同表記載の金額を支出したことが認められる。なお、甲第六二号証の五の支出は、今泉事務所に対する同年五月分の報酬の支払であって、その支出の事実を直接裏付ける明確な書証が存在しないが、掲記の他の書証によって、原告が同事務所に同年一月分から四月分まで及び六月分から一二月分まで原則として各月一万円宛の報酬の支払をしていることが認められることに鑑み、同年五月分においても同様であったことが推認されるから支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるが、その支出の事実を認めることができる。

カ 福利厚生費

a 別表第四五の一の書証欄掲記の証拠(弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る福利厚生費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第四五の二の大和屋菓子店に対する支出については、支払帳にその記載がある外、右事実を証するために請求書(甲第六三号証の八のロないしト)が提出されているが、右請求書には作成者の記載がないので右証拠及びこれに基づく出金伝票によってはその支出の事実を認めることができず、また、支払帳の記載が直ちに信用できないことは右(2)のイのとおりであって、他に右支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

キ 減価償却費

別表第四六の減価償却費については、振替伝票及び減価償却費の計算書が提出されているが(甲第六四号証のイ及びロ)、その償却額の算出の基礎となる各数値が真実と合致するものであることを認めるに足りる証拠はないから、その主張に係る償却額を認めることはできない。

ク 修繕費

a 別表第四七の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る修繕費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第四七の二の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

ケ 消耗品費

a 別表第四八の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る消耗品費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第四八の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

コ 水道光熱費

a 別表第四九の一の書証欄掲記の各証拠(甲第六三号証の三、七、一二、一七、二一、二六の各ロは成立に争いがなく、その余は弁論の全趣旨により成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の原告宅及び三郷工場に係る水道光熱費として同表記載の金額を支出したことが認められる。そして、右(3)のコのaのとおり、水道光熱費のうち、電気代については九割に相当する額、水道代については七割に相当する額をそれぞれ原告の事業に係る経費とすることが相当であるところ、右各割合に相当する額は、それぞれ同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表代四九の二の各支出については、当該支出がなされたことを認めるに足りる証拠がない。

サ 租税公課等

a 別表代五〇の一の書証欄掲記の各証拠(甲第五一号証の二六のロは前掲。甲第六九号証の八及び九の各ロは官公署作成部分の成立に争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の部分の成立の真正が認められ、その余はいずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る租税公課及び事業上必要な墨田民商への会費等として同表記載の金額を支出したことが認められる。なお、甲第六九号証の一二、一八及び二五の三郷工場の土地に係る各固定資産税は昭和五四年度第一期ないし第三期分に係るもので、固定資産税納税通知書その他その支出の事実を裏付ける明確な書証が存在せず、かつ、昭和五四年度は地方税法三四六条六号の基準年度に該当するから、その課税標準は必ずしも昭和五三年度の課税標準の基礎となった価額によるものではないが、概ね同年度の課税標準と同程度で推移したもの(少なくとも、土地については昭和五三年度の課税標準を下回るものでない)と推認することができるから、同年度の第一期ないし第三期分の固定資産税とそれぞれ同額の固定資産税を支出した事実は支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるが認めることができる。また、甲第六九号証の四の三郷工場の家屋に係る固定資産税は昭和五三年度の第四期分に係るものであって、固定資産税納税通知書その他その支出の事実を裏付ける明確な書証が存在しないが、右(3)のサのaと同様、支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるがその支出の事実を認めることができる。更に、甲第六九号証の一二、一七及び二四の三郷工場の家屋に係る各固定資産税は、昭和五四年度の第一期ないし第三期分に係るもので、固定資産税納税通知書その他その支出の事実を裏付ける明確な書証が存在せず、かつ、右のとおり、昭和五四年度は地方税法三四六条六号の基準年度に該当し、その課税標準は必ずしも昭和五三年度の課税標準の基礎となった価額によるものではないが、三郷工場家屋の昭和五三年度分の固定資産税額に照して、昭和五四年度においても概ね昭和五三年度と同程度の額で推移したものと推認することができるから、同年度の第一期ないし第三期分の固定資産税とそれぞれ同額の固定資産税を支出した事実は支払帳に基づく出金伝票の記載のみによるものではあるが、これを認めることができる。

そして、右(3)のサのaのとおり、右各租税公課のうち、原告宅に係る固定資産税等については五二分の四〇に相当する額を、三郷工場の土地建物に係る固定資産税については二分の一に相当する額をそれぞれ原告の事業に係る経費とすることが相当であると認められるところ、右各割合に相当する額は、それぞれ同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表第五〇の二のうちシメラー協力会費の支出については、右事実を証するために提出された領収書(甲第六九号証の一五のロ)に作成年月日の記載がないので右証拠及びこれに基づく出金伝票によっては昭和五三年中にその支出がされたことを認めることができない。また、同表のその余の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

シ 交際接待費

別表第五一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る交際接待費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

ス 保険料

a 別表第五二の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る保険料として同表記載の金額を支出したことが認められる。

しかして、(3)のスのaのとおり、右各保険料のうち、月掛店舗総合保険保険料については五二分の四〇に相当する額を原告の事業に係る経費とすることが相当であると認められるところ、右割合に相当する額は同表の下欄に記載したとおりである。

b 別表第五二の二の各支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて振替伝票又は出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない(なお、甲第七一号証の二六のロが甲第五三号証の二六の出金伝票に係る支出についてのもので、昭和五四年九月六日付の月掛総合保険保険料(日動火災)の支払に係るものでないことは右(4)のスのaのとおりである。)。

c 別表第五二の三の書証欄掲記の各証拠(いずれも成立に争いがない。)及び弁論の全趣旨によると、原告は、昭和五四年中に、小規模企業共済掛金として、同表記載の金額を支払った事実を認めることができるが(なお、支払帳には小規模企業共済掛金として各回とも二万円宛を支払った旨の記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右各記載が直ちに信用できないことは右(2)のイ及びウのとおりであり、各回とも共済契約者番号〇九九一五三三の契約に係る掛金一万円以外の掛金の支出をしたことを裏付けるに足りる証拠はない。)、右金額を事業所得に係る必要経費に算入することができないことは、右(3)のスのcのとおりである。

セ 通信費

a 別表第五三の一の書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五四年分の事業所得に係る通信費として同表記載の金額を支出したことが認められる。

b 別表第五三の二の各支出については出金伝票が作成されているが、右記載が直ちに信用できないことは右(2)のウのとおりであり、他に右各支出がされたことを裏付けるに足りる証拠はない。

(6) 右(3)ないし(5)によれば、係争各年の原告の事業に係る一般経費の支出の実額を立証し得た金額は別表第五四のとおりである。しかして、右金額のみでは、係争各年とも、原告の主張に係る一般経費の額に達しないことはもとより、被告主張の推計による一般経費の額にも及ばないのであるから、一般経費に係る原告の実額立証は、結局、奏効しなかったものというべきであり、一般経費に係る原告の実額主張は失当である。

(三)  特別経費中の外注加工費について

(1)ア 係争各年の原告の事業所得に係る外注加工費の実額を証するための証拠としては、請求書、領収書等の帳票類(甲第八二号証の一から第八九号証の一六まで)の外、外注先を日新工業株式会社とする取引に係る同社への支払を記載したとする日新工業帳(甲第九〇号証)及び前記支払帳(甲第九一号証。なお、右証拠は前掲甲第一〇八、第一九、第三八、第五六号証の一部分を抜粋したものである。)が提出されている。

イ ところで、前掲甲第一〇〇号証及び原告本人尋問(第二回)の結果によれば、右日新工業帳は、えつの作成に係るもので、各月ごとに、昌立製作所から受注した機械部品製作加工作業を日新工業株式会社に外注する場合には、その受注の際に、外注加工の内容、個数及び単価とともに、これによって算出することができる日新工業株式会社に支払うべき外注加工費の額、原告が取得する加工費の額を記載した上、昌立製作所への加工費請求書の提出時期及び集金の時期を欄外に注記し、また、岡バルブ製造株式会社又は田尻機械工業株式会社から受注した機械部品製作加工作業を日新工業株式会社に外注する場合には、外注加工の内容、個数及び単価の外、発注先に請求書を提出する際に日新工業株式会社に支払うべき外注加工費の額を記載し、発注先から原告が支払を受けて、日新工業株式会社に外注加工費を支払う際、その時期を注記していたものであるとされている。しかしながら、右甲第九〇号証によると、右日新工業帳は数字、文字、記号等が雑然と書き付けられた単なるメモ書の域を出るものではない上、右説明によっても記載の仕方が明らかでない箇所もあって、全体として他者がその内容を十全に理解することが困難な客観性に乏しいものではあるのみならず、随所に抹消、加筆、訂正が施されており、違算も少なくないので、その記載の正確性にも疑問が持たれるものといわざるを得ない。加えて、官公署作成部分の成立に争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の部分の成立の真正を認め得る乙第二三号証の一ないし三によれば、日新工業株式会社は、東京国税局長の照会に応じて、係争各年の原告に対する月別の売上高が別表第五五のとおりである旨回答したことが認められるところ、その金額はほとんどの月のおいて日新工業帳に基づく原告主張の外注加工費の額(後記エの総勘定元帳の記載額)を下回っている。

そうすると、右日新工業帳のみによって日新工業株式会社に対する外注加工費の支出額を認めることはできないというべきであり、同社に対する支出額は同社から回答のあった別表第五五に記載の額の限度で認めるのを相当する。

ウ 支払帳の記載に一般的に信を措き難く、その記載のみによって経費の支出の事実を認めることができないことは、右(二)の(2)のイのとおりである。

エ なお、前記総勘定元帳(甲第二〇、第三九、第五七、第七五ないし第七七、第九二ないし第九四、第九七ないし第九九号証)には、外注加工費の支出についても記載がある。そして、右総勘定元帳作成の経緯は右(二)の(2)のウのとおりである外、証人土屋道子の証言によれば、右外注加工費の支出の記載は、請求書、領収書等の帳票類の外、支払帳又は日新工業帳の記載及び原告又はえつからの聞取りに基づくものであることが認められる。そうすると、総勘定元帳の右記載の証明力は、その記載の基となった各帳票類、支払帳又は日新工業帳の証明力を超えるものでないことは明らかである。

オ 右のアの請求書、領収書等の帳票類のうちには、宛名を「上様」とするものや作成者の名下の印若しくは訂正印がないものが含まれているが、原告が当該帳票類を本訴において提出した状況等に照らして、当該帳票類に係る経費の支払の事実を認めることができるものというべきである。

(2) そこで、右(1)のイないしオで述べたことを前提として、本件で提出された各証拠により係争各年の原告の事業所得に係る外注加工費の額を実額で認めることができるか否かについて検討する。

ア 別表第五六ないし第五八の各一の書証欄掲記の各証拠(乙第二三号証の一ないし三は前掲。その余はいずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認め得る。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は係争各年の事業所得に係る外注加工費としてそれぞれ右各表記載の金額を支出したことが認められる。

イ 他方、別表第五六ないし第五八の各二の各支出は、総勘定元帳に記載のある金額で、日新工業帳若しくは支払帳に記載があるか(なお、証人土屋道子の証言によれば、支払帳に「ケンマ」と記載されている支出先は因幡工業所を指すものであることが認められる。)又はこれらに記載がなく、かつ、いずれも請求書、領収書等の帳票類を伴わないものであるところ、右総勘定元帳、日新工業帳及び支払帳の各記載のみによっては、その支出の事実を認め難いことは右(1)のイないしエのとおりであり、他に各右支出がされたことを(日新工業株式会社に対する外注加工費の支出については、右アの額を超える支出がされたことを)裏付けるに足りる証拠はない。

そうすると、係争各年の原告の事業所得に係る外注加工費の支出の実額を立証し得た金額は別表第五六ないし第五八の各一の金額のみであるというべきところ、右金額は、原告の主張に係る外注加工費の額の約六二ないし八二パーセントに相当するに過ぎないから、外注加工費に係る原告の実額立証は、結局、奏効しなかったものというべきであり、外注加工費に係る原告の実額主張も失当である。

(四)  特別経費中の給料賃金について

(1) 係争各年の原告の事業所得に係る人件費(給料賃金)の額の実額を証するための証拠としては、各年毎の賃金帳(概ね昭和五二年分が甲第一〇一号証、昭和五三年分が甲第一〇二号証、昭和五四年分が甲第一〇三号証)、右賃金帳から各従業員への給料支払額を移記し整理して記載したとする帳面(昭和五二年分が甲第一〇四号証、昭和五三年分が甲第一〇五証、昭和五四年分が甲第一〇六号証、以下「賃金整理帳」という。)、係争各年当時の従業員であった千葉仁太郎、小竹勝晃、西坂一夫、萩原恒二郎、岩上操、本多忠八、川居政右門、岡安てる子、鈴木さとみ及び佐野源二の各作成名義に係る係争各年の給料支払証明書(甲第二号証の一ないし一〇)、同じく係争各年当時の従業員であった関田政義、白石喜四郎、小山内イマ及び黛治夫に係る原告作成名義の給料支払報告書(甲第二号証の一一ないし一四)、係争各年当時臨時工として短期間雇用された熊木啓之、田中隆、石飛毅、瀬戸浩己、水谷宏文、永島泉、島崎郁雄及び渡辺博史に係る原告作成名義の給料支払報告書(甲第二号証の一五)が提出されている。

そして、右各証拠と、原告本人尋問(第二回)の結果により成立の真正を認め得る甲第一〇七号証及び右尋問結果とを併せ考えれば、賃金帳、賃金整理帳及び右各給料支払証明書又は給料支払報告書に記載されている係争各年の原告の各従業員及び臨時工への年間給料支払額は別表第八記載の金額と符合するものと一応認められる。

もっとも、右甲第一〇七号証及び原告本人尋問(第二回)の結果によれば、賃金整理帳は、係争各年ごとに各月別に全従業員に係る支払給料額の記載を一まとめにしてある賃金帳を見やすくするために、えつ外一名が右賃金帳の記載を移記して、係争各年ごとに各従業員別に各月の支払給料額の記載を一まとめにして作成したものであることが認められるから、賃金整理帳の証明力は賃金帳のそれに依存する関係にある。また、右尋問結果及び弁論の全趣旨によれば、千葉仁太郎外九名の従業員の作成名義に係る給料支払証明書は、予め原告が賃金帳の記載に基づいて算出した当該従業員に係る係争各年の年間給料支払額を記載した右各証明書の文案を作成し、これに右同様賃金帳から各月ごとの給料支払額を移記して作成した一覧表を添付し、本訴提起後の昭和五九年に賃金帳とともに当該従業員に示して、その場で署名押印を得たものであること、その当時、右各従業員は未だ原告に雇用されており、その署名押印の際に右証明書の文案に記載された支払給料額を手持ちの資料に基づいて確認するようなことはしなかったことが認められ、右事実に徴すれば、右各給料支払証明書の証明力も賃金帳のそれを超えるものとは言い難い。更に、右尋問結果によれば、関田政義外三名に係る給料支払報告書に記載された右各従業員の係争各年の年間給料支払額及び添付の一覧表の各月ごとの給料支払額は、原告が賃金帳に基づいて算出し、あるいは賃金帳から移記したものであることが認められるから、右各給料支払報告書の証明力も賃金帳のそれに依存する関係にある。

そうすると、係争各年の原告の従業員に係る人件費(給料賃金)の額を実額で立証することができるか否かは、結局、賃金帳の証明力にかかるものということができる。

(2) 前掲第一〇七号証の供述記載及び原告本人尋問(第二回)の結果では、賃金帳はえつが作成していたもので、その記載に係る金額の算出方法は、月給制である千葉仁太郎及び出来高制である岡安てる子及び小山内イマを除くその余の従業員については、給料支払日である毎月一五日と末日に、タイムカードで出勤日及び残業時間を確認した上、当該従業員について予め定めてある日給の額(時給の八時間分)に出勤日数を乗じて本給の額を算出し、これに当該従業員について予め定めてある残業手当の時間当たり単価に右残業時間を乗じて得た残業手当の額、当該従業員について予め定めてある額の休日出勤手当の額、皆勤手当の額(日給の二日分)、住宅手当の額、家族手当の額、交通費の額、更に一部の従業員については特別手当の額を加え(ただし、毎月一五日の支払日には残業手当及び休日出勤手当の額のみを加え)、遅刻、早退に係る時給分及び健康保険・厚生年金保険の保険料(毎月末日の支払日のみ)を減じて支給額を算出したが、その算出過程の各金額及び算出結果としての支給額に端数が生じた場合には、随時切り上げて切りのよい金額としたものとされ、また、千葉仁太郎については、同人に対する給料支払日である毎年一〇日と二六日に、予め定めてある当該支払日に係る半月分の本給額に、予め定めてある残業手当の時間当たり単価にタイムカードで確認した残業時間を乗じて得た残業手当の額、予め定めてある職務手当及び休日出勤手当の額、交通費の額を加え(ただし、職務手当は毎月一〇日の支払日、交通費は毎月二五日の支払日にのみ加える。)、毎月一〇日の支払日には健康保険・厚生年金保険の保険料を減じて支給額を算出したが、その算出過程の各金額及び算出結果としての支給額に端数が生じた場合には、随時切り上げて切りのよい金額としたものとされ、更に、小山内イマ及び岡安てる子については、その製作加工を担当する機械部品の一日の出来高個数を毎日記載しておいて、毎月一五日と末日の給料支払日に当該支払日に係る半月間の出来高個数合計に予め定めてある個数単価を乗じて算出したとされている。もっとも、後記(3)の事実が判明した後の本人尋問(第二回)の続行期日において、原告は、従業員の一部に対しては右のような計算方法によって算出される給与支払額以上の給与額を支給したことがあり、その際には、賃金帳に残業時間等を実際の時間より多く記載する等の操作をして、現実に支給した給与額に合わせるなどのことをしたこともあった旨供述の一部を改め、また、後掲第一一一号証には同旨の供述記載がある。

(3) ところで、原告は本訴において、当初は、賃金整理帳をもって、本件各処分に対する審査請求をした際に国税不服審判所に提出した資料であると主張し、前掲甲第一〇七号証及び原告本人尋問(第二回)の結果中にも同旨の供述記載又は供述があることが記録上明らかであるところ、成立に争いのない乙第三〇ないし第三三号証、右尋問結果により成立の真正を認め得る甲第一一一号証、右尋問結果(甲第一一一号証及び右尋問結果については後記措信しない部分を除く。)によれば、原告が国税不服審判所に提出した従業員に対する給与支払額に関する帳面は、賃金整理帳とは別のものであること(以下、原告が国税不服審判所に提出した従業員に対する給与支払額に関する帳面を「旧賃金整理帳」という。)、旧賃金整理帳の記載と賃金帳及び賃金整理帳の記載とでは、係争各年とも、各従業員についての残業時間数や各支払日に支払った給与の額など、本来一致しているべき数値の相当部分が相違していることが認められる。この点につき、原告は後になって、旧賃金整理帳は国税不服審判所に提出するため、えつが賃金帳に基づいて作成したもであるが、その際、右(2)のとおり、賃金帳の残業時間等の記載がタイムカードと異なるところがあり、更に、一部の従業員に対しては従業員間の経験年数等のバランスに配慮して、賃金記載の実際の支給額を下回る支給額を記載した給与明細書を交付するなどしていたために、えつが独断で、賃金帳記載の数値をそのまま旧賃金整理帳に移記せず、タイムカードや給与明細書などに記載した数値に合わせた数値を旧賃金整理帳に記載した箇所があり、他方、賃金整理帳は本訴に提出するため、賃金帳の記載をそのまま移記したものであるので、旧賃金整理帳と賃金帳及び賃金整理帳の記載とでは異なることになった旨主張を変更し、原告本人尋問(第二回)の結果により成立の真正を認め得る甲第一一一号証及び右尋問結果中には、同旨の供述記載及び供述部分がある。しかし、右供述記載及び供述部分中の旧賃金整理帳の記載に関する部分は極めて不自然であって到底措信し難いものといわなければならない。

(4) 加えて、前掲甲第一〇七号証、成立に争いのない乙第二六号証の二ないし四、第二七、第二八号証の各二、三、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから、真正な公文書と推定すべき乙第二六ないし第二八号証の各一、原告本人尋問(第二回)の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、従業員に対し給料を支払う際、所得税の源泉徴収を全くしていなかったこと、従業員の健康保険・厚生年金保険に関し、自己の負担すべき保険料の事業主負担部分及び従業員の負担すべき保険料の被保険者負担部分をそれぞれ一部を不正に免れるため、標準報酬月額算定の基礎となる報酬月額につき、実際の金額よりもはるかに低額の金額として保険者に届け出ていたこと、従業員である千葉仁太郎に対し、同人に対する昭和五二年分給与支払額が一〇六万円である旨の昭和五三年三月九日付支払証明書、昭和五三年分の給与支払額が一六八万三〇〇〇円である旨の昭和五四年三月一日付給与支払証明書及び昭和五四年分の給与支払額が一五六万八〇〇〇円である旨の昭和五五年二月一五日付の給与支払証明書をそれぞれその作成日付頃に作成交付し、千葉仁太郎はこれを添付資料として昭和五三年ないし昭和五五年度の住民税の申告をしたこと、従業員である小竹勝見に対しても、同人に対する昭和五三年分の給与支払額が九二万八八〇〇円である旨の昭和五四年三月八日付給与支払証明書、昭和五四年分給与支払額が九八万円である旨の昭和五五年三月八日付の給与支払証明書をそれぞれの作成日付頃に作成交付し、小竹勝見はこれを添付資料として昭和五四年度及び昭和五五年度の住民税の申告をしたこと、従業員である岩上操に対しても、同人に対する昭和五三年分の給与支払額が九八万三〇〇〇円である旨の昭和五四年三月八日付の給与支払証明書、昭和五四年分の給与支払額が右同額である旨の昭和五五年三月八日付の給与支払証明書をそれぞれその作成日付頃に作成交付し、岩上操はこれを添付資料として昭和五四年度及び昭和五五年度の住民税の申告をしたことをそれぞれ認めることができる。

(5) 以上のとおり、賃金帳の記載についての原告の供述には変遷がみられ、また、賃金帳のほかに、これと給与支払額やその算出の根拠となる事実を異にする部分のある旧賃金整理帳が存在しており、そのことについて首肯するに足りる理由が示されておらず、更に、原告自身が従業員の一部に対し、賃金帳記載の金額よりはるかに低い金額を当該従業員に対する年間給与支払額であるとする証明書を作成しているなどの事実が認められ、加えて、原告は、従業員に係る所得税の源泉徴収を怠っており、更に健康保険・厚生年金保険の保険者に対しては虚偽の報酬月額を届け出ていたために、これらの本来客観的に把握し得る資料から、賃金帳に記載された原告の従業員に対する給与支払額が真実であるかどうかを検証することもできないことを併せ考えると、賃金帳の給与支払額の記載を信用することは到底できないというべきである。

そうすると、本件で提出された証拠から、係争各年の原告の従業員に係る人件費(給料賃金)の額の実額を認定することはできないことになるから、右人件費に係る原告の実額主張も失当である。

4  そこで、以下、収入金額を別表第三の金額とし、一般経費の額並びに人件費及び外注加工費の額は右収入金額を基礎として本件比準同業者の一般経費率並びに人件費率の平均値を用いて推計した額とすることとして、係争各年の原告の事業所得の金額を算出することとする。

(一)  収入金額

別表第三のとおり、昭和五二年分は三五〇〇万六二四三円、昭和五三年分は四〇九三万七八九三円、昭和五四年分は四五九〇万六〇五八円である。

(二)  一般経費

本件比準同業者の一般経費率の平均値は、右2の(一)及び別表第四の一ないし三のとおり、昭和五二年分が二二・四四パーセント、昭和五三年分が二一・一八パーセント、昭和五四年分が一九・三五パーセントであるから、一般経費の額は、係争各年とも右(三)の収入金額に右各比率を乗じて算出される金額であり、昭和五二年分は七八五万五四〇一円、昭和五三年分は八六七万〇六四六円、昭和五三年分は八八八万二八二二円となる。

(三)  特別経費中の人件費及び外注加工費

本件比準同業者の人件費率の平均値は、右2の(一)及び別表第四の一ないし三のとおり、昭和五二年分が五九・七七パーセント、昭和五三年分が六〇・七九パーセント、昭和五四年分が六三・三七パーセントであるから、人件費及び外注加工費の額は、係争各年とも右(一)の収入金額に右各比率を乗じて算出される金額であり、昭和五二年分は二〇九二万三二三一円、昭和五三年分は二四八八万六一四五円、昭和五四年分は二九〇九万〇六六九円となる。

(四)  特別経費中の借入金利子・割引料

(1) 原告が係争各年分の事業所得に係る借入金利子・割引料の金額として、別表第五の金額を同表記載の金融機関に支払ったことは当事者間に争いがない。

(2) 別表第五九ないし六一の各一の各書証欄掲記の証拠(いずれも弁論の全趣旨により成立の真正を認め得る。)に原告本人尋問(第二回)の結果により成立の真正を認め得る甲第一二〇号証、証人土屋道子の証言(後記措信しない部分を除く。)及び原告本人尋問(第二回)の結果を併せ考えると、原告は、係争各年の事業所得に係る借入金利子として右各表記載の金額を支払ったことを認めることができる。

(3) 別表第五九ないし六一の各二記載の支出については、支払帳にその記載があり、これに基づいて出金伝票が作成されているが、右支払帳及び出金伝票の記載が直ちに信用できないことは右3の(二)の(2)のイ及びウのとおりであり、他に右各支出がなされたことを裏付けるに足りる証拠はない(なお、前掲甲第七九号証の二によれば、原告は、昭和五二年七月から昭和五四年六月まで、毎月一〇日前後に城東信用金庫に対し証書貸付金の返済をしていることが認められる。しかしながら、右返済額は元利合計金であるものと推認されるところ、その元利金の内訳については、証人土屋道子の証言中に、各二万円が元本であり、その余が利息であるとする部分があるが、右証言を裏付けるに足りる的確な証拠はなく、右証言を直ちに措信することはできないから、右返済に係る利息金は存在しないものとして扱う外はない。)。

(4) 右(1)ないし(3)によれば、係争各年分の原告の事業所得に係る借入金利子・割引料の金額は、昭和五二年分が八三万八三五八円、昭和五三年分が七七万三六五四円、昭和五四年分が一〇三万八二一二円である。

(五)  特別経費中の地代

前掲甲第一二二号証、弁論の全趣旨により成立の真正を認め得る甲第七八号証、原告本人尋問(第二回)の結果によれば、原告は、原告宅の敷地を他から借り受けており、地代として、昭和五二年中に九万一二〇〇円、昭和五三年及び昭和五四年中にそれぞれ九万六〇〇〇円を支出したこと、原告宅の延べ床面積は約一九六平方メートルで、そのうち約五二分の四〇を事業の用に供していることが認められる。そうすると、係争各年の原告の事業所得に係る地代の額は、右支払地代額に右事業供用割合を乗じて算出される金額であり、昭和五二年分は、七万〇一五三円、昭和五三年分及び昭和五四年分はそれぞれ七万三八四六円となる。

(六)  右(一)ないし(五)によれば、係争各年の原告の事業所得の金額は、昭和五二年分が五三一万九一〇〇円、昭和五三年分が六五三万三六〇二円、昭和五四年分が六八二万〇五〇九円となる。

5  右4の(六)の係争各年の原告の事業所得の金額(総所得金額)は、いずれも本件各更正に係る総所得金額を上回る。

しかしながら、原告が昭和五二年分において一九万円の、昭和五三年分において二四万円の、昭和五四年分において一二万円の各小規模企業共済掛金の支出をしたこと、小規模企業共済掛金の支払額は所得控除として総所得金額等から控除すべきものとされていることは、右3の(二)の(3)ないし(5)の各スのc、別表第二三の三、同三八の三、同五二の三のとおりである。そうすると、係争各年の原告の所得税額の算出に当たっては、総所得金額から右小規模企業共済掛金の控除を含む所得控除の額を差し引いて課税総所得金額を算出すべきところ、弁論の全趣旨によれば、本件各更正において、所得控除額として差し引かれた金額は、五二年分更正については一〇一万六二〇六円、五三年分更正については一〇二万八四五六円、五四年分更正については一一一万五六四八円であって、いずれもその内に小規模企業共済掛金の控除額を含んでいないこと、本件各更正において、別表第一の一ないし三の各総所得金額から右各所得控除額を差し引いた課税総所得金額は五二年分更正については三四四万八〇〇〇円、五三年分更正については四七五万二〇〇〇円、五四年分更正については五六四万六〇〇〇円とされていることが認められる(いずれも一〇〇〇円未満の端数切捨て)。

そして、原告は、小規模企業共済掛金の控除以外の右各所得控除額については明らかに争わないものと認められるから、右各所得控除額に右小規模企業共済掛金を加えた金額を所得控除の額とし、これを右4の(六)の係争各年の原告の事業所得の金額(総所得金額)から差し引いて、係争各年の原告の課税総所得金額を算出すると、昭和五二年分は四一一万二〇〇〇円、昭和五三年分は五二六万五〇〇〇円、昭和五四年分は五五八万四〇〇〇円となり(いずれも一〇〇〇円未満の端数切捨て)、昭和五二年分及び昭和五三年分の各課税総所得金額は、それぞれ五二年分更正及び五三年分更正に係る課税総所得金額を上回るが、昭和五四年分の課税総所得金額は五四年分更正に係る課税総所得金額を超えることになる。

そうすると、五二年分更正及び五三年分更正はいずれも適法であり、五四年分更正は、課税総所得金額を五五八万四〇〇〇円として計算した額の範囲内の部分は適法であるが、右範囲を超える部分は違法であることになる。

四  本件各賦課決定の適否について

(一)  五二年分更正により原告が更に納付すべき税額は六二万三〇〇〇円(国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)であるから、同法六五条一項により右税額に一〇〇分の五を乗じて算出した三万一一〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満の端数切捨て)の過少申告加算税を賦課した五二年分賦課決定は適法である。

(二)  五三年分更正により原告が更に納付すべき税額は七九万五〇〇〇円(国税通則法一一八条三項により一〇〇〇円未満の端数切捨て)であるから、同法六五条一項により右税額に一〇〇分の五を乗じて算出した三万七九〇〇円(同法一一九条四項により一〇〇円未満の端数切捨て)の過少申告加算税を賦課した五三年分賦課決定は適法である。

(三)  五四年分更正が課税総所得金額を五五八万四〇〇〇円として計算した額の範囲内の部分は適法であるが、右範囲を超える部分は違法であることは右三の5のとおりであり、このことは五四年分賦課決定についても同様である。

五  結語

よって、原告の請求は、五四年分更正及び五四年分賦課決定のうち課税総所得金額を五五八万四〇〇〇円として計算した額を超える部分の取消しを求める限度で理由があるから、右部分を認容することとし、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法八九条、九二条ただし書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中込秀樹 裁判官 長屋文裕 裁判官石原直樹は、転補につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 中込秀樹)

(別表第一の一)

課税経過一覧表(昭和52年分)

<省略>

(別表第一の二)

課税経過一覧表(昭和53年分)

<省略>

(別表第一の三)

課税経過一覧表(昭和54年分)

<省略>

(別表第二)

事業所得金額算出表(被告主張額)

<省略>

(別表第三)

収入金額内訳表(被告主張額)

<省略>

(別表第四の一)

昭和52年分同業者比率表

<省略>

(別表第四の二)

昭和53年分同業者比率表

<省略>

(別表第四の三)

昭和54年分同業者比率表

<省略>

(別表第五)

借入金利子・割引料(被告主張額)

<省略>

(別表第六)

比準同業者従業員等構成表

<省略>

(別表第七)

事業所得金額算出表(原告実額主張)

<省略>

(別表第八)

給料賃金明細表(原告実額主張)

<省略>

(別表第九)

外注加工費明細表(原告主張実額)

<省略>

(別表第一〇)

甲第121号証の集計表

<省略>

(別表第一一)

材料費(昭和52年分)

<省略>

(別表第一二)

荷造運賃(昭和52年分)

<省略>

(別表第一三)

消耗工具費(昭和52年分)

<省略>

(別表第一四の一)

法定福利費(昭和52年分)

<省略>

(別表第一四の二)

<省略>

(別表第一五)

手数料(昭和52年分)

<省略>

(別表第一六)

<省略>

(別表第一七)

<省略>

(別表第一八の一)

修繕費(昭和52年分)

<省略>

(別表第一八の二)

<省略>

(別表第一九の一)

消耗品費(昭和52年分)

<省略>

(別表第一九の二)

<省略>

(別表第二〇の一)

水道光熱費(昭和52年分)

<省略>

(別表第二〇の二)

<省略>

(別表第二一の一)

租税公課等(昭和52年分)

<省略>

(別表第二一の二)

<省略>

(別表第二二の一)

交際接待費(昭和52年分)

<省略>

(別表第二二の二)

<省略>

(別表第二三の一)

保険料(昭和52年分)

<省略>

(別表第二三の二)

<省略>

(別表第二三の三)

<省略>

(別表第二四の一)

通信費(昭和52年分)

<省略>

(別表第二四の二)

<省略>

(別表第二五)

雑貨(昭和52年分)

<省略>

(別表第二六の一)

材料費(昭和53年分)

<省略>

<省略>

(別表第二六の二)

<省略>

(別表第二七)

荷造運賃(昭和53年分)

<省略>

(別表第二八の一)

消耗工具(昭和53年分)

<省略>

(別表第二八の二)

<省略>

(別表第二九の一)

法定福利費(昭和53年分)

<省略>

(別表第二九の二)

<省略>

(別表第三〇)

手数料(昭和53年分)

<省略>

(別表第三一の一)

福利厚生費(昭和53年分)

<省略>

(別表第三一の二)

<省略>

(別表第三二)

<省略>

(別表第三三の一)

修繕費(昭和53年分)

<省略>

(別表第三三の二)

<省略>

(別表第三四の一)

消耗品費(昭和53年分)

<省略>

<省略>

(別表第三四の二)

<省略>

(別表第三五の一)

水道光熱費(昭和53年分)

<省略>

(別表第三五の二)

<省略>

(別表第三六の一)

租税公課等(昭和53年分)

<省略>

(別表第第三六の二)

<省略>

(別表第三七の一)

交際接待費(昭和53年分)

<省略>

(別表第第三七の二)

<省略>

(別表第三八の一)

保険料(昭和53年分)

<省略>

(別表第第三八の二)

<省略>

(別表第三八の三)

交際接待費(昭和53年分)

<省略>

(別表第三九の一)

通信費(昭和53年分)

<省略>

(別表第三九の二)

<省略>

(別表第四〇の一)

材料費(昭和54年分)

<省略>

<省略>

(別表第四〇の二)

<省略>

(別表第四一)

荷造運賃(昭和54年分)

<省略>

(別表第四二の一)

消耗工具費(昭和54年分)

<省略>

(別表第四二の二)

<省略>

(別表第四三)

法定福利費(昭和53年分)

<省略>

(別表第四四)

手数料(昭和54年分)

<省略>

(別表第四五の一)

福利厚生費(昭和54年分)

<省略>

(別表第四五の二)

<省略>

(別表第四六)

<省略>

(別表第四七の一)

修繕費(昭和53年分)

<省略>

(別表第四七の二)

<省略>

(別表第四八の一)

消耗品費(昭和54年分)

<省略>

<省略>

(別表第第四八の二)

<省略>

(別表第四九の一)

水道光熱費(昭和54年分)

<省略>

(別表第四九の二)

<省略>

(別表第五〇の一)

租税公課等(昭和54年分)

<省略>

(別表第五〇の二)

<省略>

(別表第五一)

交際接待費(昭和54年分)

<省略>

(別表第五二の一)

保険料(昭和54年分)

<省略>

(別表第第五二の二)

<省略>

(別表第五二の三)

<省略>

(別表第五三の一)

通信費(昭和54年分)

<省略>

(別表第五三の二)

<省略>

(別表第五四)

実額立証に係る一般経費一覧表

<省略>

(別表第五五)

日新工業株式会社の回答による外注加工費の額

<省略>

(別表第五六の一)

外注加工費(昭和52年分)

<省略>

(別表第五六の二)

<省略>

(別表第五七の一)

外注加工費(昭和53年分)

<省略>

(別表第五七の二)

<省略>

(別表第五八の一)

外注加工費(昭和54年分)

<省略>

(別表第五八の二)

<省略>

(別表第五九の一)

利子割引料支払額一覧表(昭和52年分)

<省略>

(別表第五九の二)

<省略>

(別表第六〇の一)

利子割引料支払額一覧表(昭和53年分)

<省略>

(別表第六〇の二)

<省略>

(別表第六一の一)

利子割引料支払額一覧表(昭和54年分)

<省略>

(別表第六一の二)

<省略>

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